第34章 悪夢のつづき
車には、風見さんともう1人運転を担当している公安の人がいた。私は1人で後部座席に座っている。
「ねぇ風見さん、さっきの電話ってもしかして上司の方ですか?」
「……何故だ」
「いや、前にお会いした時はだいぶ偉そうだったのに、さっきの電話では大分ヘコヘコしてたなーって思いまして」
「…ヘコヘコ……。
ゴホン…君の言う通り、上司からの電話だ。それがどうした」
「いや〜、上が出来る奴だと下は色々大変ですよねぇ。
無理難題ばっかりふっかけてきて、全員が全員お前みたいに完璧じゃないんだぞ!って感じです」
「……まぁ」
「だけど、そういう自分が1番頑張るからこっちも適当に出来ないんですよね」
「あー分かります。何だかんだであの人が1番寝てませんもんね。ここ最近だってあの件があったから……「おい」す、すみません」
運転中の人も会話に入ってきたが、風見さんに制止されてしまった。あの件があったから……の続きがとても気になるが、どうやら聞けそうもないか。
風見さんが再びゴホンと咳払いをして口を開いた。
「さっきから随分と馴れ馴れしいな。君こそ、前回会った時とは大違いだ」
「はは、仲間意識ってやつです。出来るやつに振り回されるね。
それに、あれは事が事でしたから。こっちも必死だったんですよ」
「何故必死だったんだ?正直、君には関係のない事だっただろう」
「それは風見さんでも言えませんね〜」
そんな会話を続けていると、運転中の人から「もうすぐです」と告げられる。言う通り目の前には、私がいつも働いているのとは少し違う大きな建物が見えていた。
「これから君を連れていく場所は他言無用だ。いいな」
「はい」
車から降り運転をしてくれた公安の人にお礼を告げて、私は風見さんの案内の元警察庁へと入っていった。
深夜と呼ばれる時間も近づいているためか、通る場所全てに明かりはなく真っ暗だ。少し不気味にも思えるそれを横目に、スタスタ歩く風見さんに着いていく。
エレベーターで登ったり降りたり通路を曲がったり直進したり、複雑な経路を通ってやっと目的であろう場所に辿り着いた。