第33章 純黒の
「ねぇねぇ、先生にもう一つだけ聞いてもいい?」
どうやら、気になることがあるのは私だけではないようだ。
「さっきのカラーコンタクトの事なんだけどさ、お姉さんは片方にしか着けてなかったんだよね?」
「あぁ、そうだよ」
やはり気になるのはそこだよな。
「ということは、片目だけ黒く見せていただけで本当は両目とも青かったんでしょうか?」
「いえ、実はコンタクトを着けていた右目は透明だったんです」
「「透明?」」
「いや、透明に見えると言った方が正しいか。
非常に珍しい事なんですが、虹彩が強膜とほぼ同じ色をしていることによって透明のように見える人なんだと思います」
ということは、あの女性はオッドアイということに変わりは無いのか。
「先生、今日は色々とありがとうございました!」
「彼女は、責任を持って我々が身柄を保護します。
では、失礼します」
そのまま、私達は医務室を後にした。
「あれ?コナンくん、阿笠さんと子供達は?」
「あぁ、先に帰ってもらったんだ!」
「あらそう。じゃあ、良かったら探偵事務所まで送っていこうか?」
「ううん大丈夫!ボク、この後行くとこあるから」
「そう、気をつけてね」
コナンくんとも別れ、青柳が待っている車へと乗り込んだ。
「どうでした?何か分かりました?」
「んー、分かったのはあの女性が生まれつき脳弓に損傷があったのと、ちゃんとオッドアイだったってことくらい」
「つまり、収穫ゼロですか」
「ええ。
部下たちに引き継いだ女性の身辺調査も未だ連絡無し。
状況は一向に進んでないわね」
「あの女性、一体何者なんでしょうか」
「さぁね。ただ言えるのは、彼女についての情報がなければないほど、危険人物だって浮き彫りになっていくってこと」
このまで何も分からないとなると、先程青柳が言っていた説が濃厚になる。つまり、彼女がどこかの諜報員ではないかということだ。
「彼女の記憶を取り戻すことが、果たして吉なのか凶なのか…」
通り過ぎる景色を横目に、私は呟いた。