第4章 青い夏
「ちょっとお兄さんたち、女の子嫌がってますけど」
先程から少し気になっていた、女の子1人を囲むガタイのいい男2人組。
様子を見ていたら、ついに女の子の腕を掴み始めたので思わず割って入った。
「あ?んだよてめぇ」
「ありゃ、よく見りゃ結構美人じゃん。
丁度いいや、あんたが俺らの相手してよ!なんか奢るからさ」
案の定、これでもかと言うほど睨みつけられた。
幸い、と言って良いのか分からないが、矛先が私に移ったようだ。
それを機にさりげなく女の子を後ろへ誘導する。
「ごめんなさい、私、ナンパはイケメンしか受け付けてないから」
「んだとこいつ、生意気いいやがって」
「威勢がいいねお姉さん。でも変なこと言わない方が身のためなんじゃない?
黙って着いてこいよ」
そう言いながら強めの力で腕を掴まれた。
「軽犯罪法第一条、他人の進路に立ちふさがって、若しくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者。該当するものは、これを拘留または科料に処する」
「は?何言ってんの?」
「あんたたちのやってたことよ。どうする?近くに交番あるけど」
「訳わかんないこと言ってんじゃねぇよ。まじで殴るぞ」
「どうぞ殴れば?って言ったって、どうせ出来っこないんでしょうけど」
「んだとっ!!」
ドゴッ
鈍い音が響き、口の中で血の味がした
「……これで暴行罪。2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金。
どうする?本格的に犯罪者だけど」
「こいつやべぇよ」
「もういい、行こうぜ」
そう言って男たちは去っていった。
本当ならここで見逃す訳にはいかないが、休暇中に報告書やらなんやらはごめんなので、こちらとしても去ってもらった方がありがたい。
面倒事には関わりたくないと言っておきながら自分からふっかけてしまった。
まあ、穏便に(?)収まったし良しとしよう
「あ、あの、ありがとうございます」
私の後ろにいる女の子がぺこりと頭を下げた。