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【名探偵コナン】sangría

第32章 お食事



「難しいですね」

「難しいも何も、あなたはあなたのままで十分です」


なんだか、とても甘やかされている気がする。
無愛想だなんて三十路間近の女には致命的だろうに。


「でも、無愛想な女と2人で食事しても楽しくないでしょう?」

「いいや、相手があなたなら別です。
それに今日はさんの素敵な1面も知れましたから」

「素敵な1面、ですか…?」

「強がりだけど、本当は脆いんだなと」

「……お願いです、まじで忘れてください」

「残念ながら忘れられませんね」


そう言って沖矢さんはニヒルに笑った。
そういう笑顔はよくするからタチが悪い。




「時間も時間ですし、そろそろ行きましょうか」

「あ、なら私お会計してきます」


立ち上がろうとした私を、沖矢さんが制止した。


「その必要はありません。今私がしてきましたから」

「……はい?」

「会計はもう済んでいます」



一瞬、何を言われたのか分からなかった。

会計はもう済んでいる……?
え、じゃあついさっき席を立ったのは、お手洗いではなくお会計をしに行ったということ…?



「そ、それじゃあ意味がないじゃないですか!?
今日は私から沖矢さんへ、お礼とお詫びを兼ねたお食事だったのに!!」

「レディに支払わせる男などいないでしょう。
店を探してくれて、沢山話をしてくれただけで満足です」

「いや、そういう訳には……」


店探しはともかく、あんな卑屈で暗い話がお礼とお詫びに足るわけが無い。


「いくらでした?」

「秘密です」

「もう!」

「ほら、ここでうだうだ言っていても店にご迷惑でしょうから早く出ましょう」


どうしても納得がいかない私を沖矢さんは上手い具合に丸め込み、結局そのまま店を後にしてしまった。


















その後、最寄りが1駅違いの私たちは同じ電車で帰宅。

私が降りる駅に着いた時、なんと沖矢さんも1度降りて改札前まで着いてきてくれた。
全く、溜め息が出るほど紳士だなこの人。



「わざわざ見送りまでしていただいて、ありがとうございます」

「いや、私が好きでしていることですから」
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