第31章 緋色の
しばらく沖矢さんがリビングでくつろいでいるという何の変哲もない映像が流れていたが、ふとピンポーンと呼び鈴が鳴った。
どうやら宅配便のようだ。
この平和な状況の後に一体何が待ち受けているんだか。
……と思った瞬間、私の目に入ってきた人物。
『こんばんは、初めまして。安室透です。
……でも、初めましてじゃありませんよね?』
玄関に設置された画面から、そんな音声が聞こえてきた。
明らかに同様しつつも、コナンくんとの約束があるため何も発さず流れる映像をただただ凝視する。
なぜ、どうしてあいつが工藤邸に来たのか?
……そんなの、愚問だろう。
あいつも私と同様、沖矢さんの化けの皮を剥がしに来たんだ。
恐らくは、『組織』の任務を遂行するために。
しかし、追い返すのかと思いきや沖矢さんは安室さんを中へと招き入れる。
一体どういうつもりなのだろうか。
『ミステリーはお好きですか?』
『ええ、まぁ』
『ではまずその話から』
彼らは玄関からリビングへと移動し、眺める映像もリビングの隠しカメラのものになる。
『まぁ、単純な死体スリ替えトリックですけどね』
『ホォー、ミステリーの定番ですね』
『ある男が来葉峠で頭を拳銃で撃たれその男の車ごと焼かれたんですが、かろうじて焼け残ったその男の右手から採取された指紋が、生前その男が手に取ったというある少年の携帯電話に付着していた指紋と一致し、死んだのはその男だと証明されたんです』
覚えがありすぎるこの話。
言わずもがな、私がジョディから聞いた赤井さんの話だ。
『でも妙なんです。その携帯に残っていた指紋、男はレフティ、左利きなのに、なぜか携帯に付着していたのは右手の指紋だった。
変だとは思いませんか?』
確かに赤井さんは左利きだったが、そんなのいくらだって理由はあるだろう。
たまたま利き手が何かで塞がっていたとか。
『それは、右手で取らざるを得なかったから。
その携帯はね、その男が手に取る前に別の男が拾っていてその拾った男が右利きだったからですよ』