第31章 緋色の
案内されるのは例の客間かと思ったが、そこを通り過ぎどんどん奥へと歩いていく。
……ざっと見た感じ、玄関に2台、廊下に3台、そして通り過ぎたリビングには5台の隠しカメラが設置されている。
まるで、これからこの屋敷で何かが起こるとでも言いたげな設備だ。
「ねぇコナンくん、沖矢さんはどこ?
私、彼に呼ばれてここに来たんだけど」
「昴さんなら自分の部屋にいるよ」
「彼には会えないのかしら?」
「今はね。後で会えると思う」
この屋敷にいるにも関わらず今は会えない。
後でなら会うことが出来る。
どういうことだ?
「その理由も教えてくれるの?」
「うん。全部分かるよ」
すると、コナンくんはとある部屋の前で立ち止まった。
「さん、これからこの家に誰が来ても、何が起こっても喋らないでじっとしてるって約束できる?」
突然そんな質問をしてきた。
普段の私なら、間髪入れずにノーと答えているだろう。
だが、今回ばかりは状況が違うらしい。
コナンくんの言う“喋らずにじっとする”ことが、私にとっても利になるのだろう。
「えぇ、約束する」
私の返答を聞いて、コナンくんは目の前の部屋のドアを開けた。
部屋には無数のディスプレイが設置されており、明かりのついていない部屋でその存在を主張している。
「こ、この部屋は…?」
「秘密の部屋だよ。
さんには、これから起きることをボクとここで見てもらう」
確かに、ディスプレイに映し出されているのは先程確認した隠しカメラの映像のようだ。
ここでなら、この屋敷で起こることの全貌が遠隔で確認出来るというわけか。
「じゃあ、始めよう」
そう言って、コナンくんは耳にインカムを着けた。
それと同時に画面に映ったのは、マスクを付けた沖矢さん。
恐らく自室であろう場所から出て、リビングでテレビを観ている。
まるで、私たちがこの部屋にいることなど知らないかのように。
観ているテレビは、私も楽しみにしていたマカデミー賞。
もう、そんな時間か。
カメラ越しに聞こえてくる音声に耳を傾けつつも、コナンくんの言っていた“これから起こること”に緊張して、内容が全然入ってこない。
やっぱり、録画予約してきて正解だったな。