第30章 お茶会
「……え…」
私は言葉を失った。
頭の中が良くない想像で埋め尽くされていく。
「今すぐそちらに向かいます」
『あ、いやッ…………』
看護師さんの話が途中のようだったが、焦りに焦っていた私はお構い無しに電話を切ってしまった。
「青柳先輩ですか?」
「うん、何か車に跳ねられたらしいから急いで杯戸病院に行ってくる」
「えっ!?そ、それ大丈夫なんですか?!」
「分からない…。
とにかく、私は出るから後はよろしく」
そう言い残して、私は早急に本庁を後にした。
朝もお世話になった私の車に再び乗り込む。
悪いけど、あなたにはまた頑張ってもらうわ。
そうして、駐車場内でギュルギュルッ!!という音を響かせながら車を発進させた。
______
やっとの思いで着いた杯戸病院。
必死過ぎてここに来るまでの車の中の記憶が一切無い。
とにかく、急いで青柳の元へ行かないと!!
そう思って受付目掛けて猛ダッシュした。
「すみません!!事故で緊急搬送された男性は!今どこですか!!!」
「は、はい?」
息を荒らげる私の勢いに困惑している看護師さん達。
「あ、あの、本日はそのような患者さんは…」
「さん!?」
受付に詰め寄っていると、背後から名前を呼ばれた。
振り向くと、そこにはまさに探していた人物。
「あ、青柳!?」
「ちょ、さん!こんなとこで何してるんすか!?」
青柳が私の元に駆け寄ってくる。
「な、何って、あんたが運ばれたって言うから…」
「いや運ばれたって、大袈裟ですよ」
「で、でも、車に跳ねられたって…」
「跳ねられたっていうか、横断歩道で当たりかけたんすよ。
それでびっくりして転けちゃっただけで、実際は当たってませんから。
でも相手方が心配だから一応病院行こうって言って連れてきてもらったんです。ほら、擦り傷だけでしょ?」
そういう青柳は、頬にガーゼを貼りながらも確かに元気そうだった。
「……本当に擦り傷だけ?」
「はい。体はめちゃめちゃ元気です」
「頭打ったりしてない?」
「転んだ時に少しだけ。でも、さっきお医者さんに異常なしって言われました」