第29章 桜と追憶
「、大丈夫?すごく顔色が悪いけど」
「……うん、大丈夫。何でもない」
「そう?」
「私達も帰りましょう」
ジョディは自分の青い財布を警察から受け取り、そして目暮警部や子供たちに挨拶して私達は自分達の乗ってきた車へと向かった。
「ねぇ、本当に大丈夫?呼吸も乱れてるみたいだし」
「大丈夫。本当に」
車に乗り込んだ後、ジョディから再び心配の言葉を掛けられた。
正直、大丈夫かと言われれば答えはノーだ。
ずっと心臓がドクドク鳴っている。
それでも、自分に言い聞かせるために大丈夫だと答え続ける。
「……ねぇ、ジョディ」
「ん?何?」
車が走る中、運転してくれているジョディへ問いかける。
「……“バーボン”って、何だか知ってる?」
その言葉を聞いた瞬間、ジョディの肩が大きく揺れた。
これは、確実に何か知っているな。
「……知らないわ」
「うそ、何か知っているんでしょ?
お願い教えて。“バーボン”って、一体何なの?」
「残念だけど、答えられない」
やっぱり、知ってることは知っているんだ。
でも沖矢さんやコナンくんと同じ。何も答える気はないということか。
もしかしたら、コナンくんに口止めでもされているのかもしれない。
「じゃあ質問を変える。
今日コナンくんと2人で話していた内容は、この事と関係があるの?」
「……」
「沈黙ってことは、やっぱり関係あるのね」
ジョディは優秀な捜査官であることは間違いない。
ただ、友人である私には反応が分かりやすすぎる。
やはり、この件はFBIにも絡んでいるという私の読みは当たっていたようだ。
だが、それ以上は何も分からない。
「……ねぇ。
ジョディは、赤井さんの件についてどこまで知ってる?」
これは、単純な疑問だ。FBIはどこまで把握しているのかという。
……いや、何も答えようとしない彼女へ少しばかりの意地悪だったのかもしれない。
私だけ秘密にされるのは癪だ。
「どこまでって……もしかして、秀のこと何か知っているの!?
いや、でも秀はもう……」
「知ってる。って言ったら?」
ジョディを真っ直ぐに見つめてそう言い放った。
もちろん、その秘密を明かすつもりは毛頭無いが。