第29章 桜と追憶
「ねぇみんな、あの3人に会った時、妙な素振りをしてなかったかしら?例えば、連れがいて細長い棒のような物をこっそり渡してたとか」
「3人とも1人だったよ!
おじいさんは良いくじ引いたらちゃんと持って帰った方がいいって教えてくれたし」
「あの姉ちゃんは、鈴を鳴らすなら神様に聞こえるようにでっけー音で鳴らせって言ってたぞ!」
「あのおじさんは、手水舎でもう手は清めたって言ってましたから、ボク達と会う随分前からこの神社に来てたと思いますけど」
なるほど、おみくじと鈴と手水舎か……
「ええい!花弁を蹴散らしてでも凶器を見つけ出せ!!」
「「「はいっ!!」」」
凶器が一向に見つからない現状に痺れを切らした目暮警部が、刑事たちにそう指示を出した。
「えぇ〜!せっかくきれいな桃色の絨毯なのに〜!!」
「そうね、1枚1枚は花弁なのに沢山散りばめればまるでピンクのカーペット」
女の子2人がそんな会話をしている。
沢山散りばめればピンクのカーペットか、可愛いな。
……っ!?なるほど、そういう事か!
だからあの人は子供たちにあんな事を言ったんだ。
となると、犯人が足を引きずっていた理由は恐らくあれが無かったから。
そうしてコナンくんを見る。
どうやら、この子も真相に気が付いたようだな。
______
あれから数時間程が経ち、神社を封鎖するのにも限界がやってきた。
花見客が神社から帰らせろと騒ぎ立てているようだ。
「全く、凶器はまだ見つからんのかね!」
「は、はい。あれから増員して捜索に当たっていますが、まだ…」
「こりゃ、最悪の場合も考えなくてはならんぞ。
もし犯人に連れがいて、既にその連れに凶器を手渡していたとすれば、この神社に来ている大勢の花見客全員を調べなくては……」
目暮警部達が頭を抱えた。
……仕方がない。慣れない私の推理ショーといくか。
「その必要はありませんよ、目暮警部。
犯人はまだ、凶器の1部を隠し持っていますから」
「い、1部を?」
「ええ、犯人はそれを使って凶器を束ねたんです」
「た、束ねたって…。
でも、阿笠さんが見た凶器は1本の棒でしょ?束ねるも何もないんじゃない?」