第29章 桜と追憶
「姉ちゃん達も花見か?」
「えぇそうよ。ジョディがどーうしても花見に連れてって欲しいって言うから。
まぁ、本当は違う目的があるようだけど?」
そうしてジョディの方を見やる。
ジョディはあはは…と言いながら目を逸らした。
「なるほど?さっきから江戸川くんの様子がおかしいと思ったら、2人でコソコソ密談するために先生をここに呼びつけてたって訳ね」
哀ちゃんの鋭い言葉に、当の2人が固まった。
「はっ、そうことね。
公園や神社って、スパイとかがよく情報交換に使う場所だって言うものね。
ま、“観光目的の”FBI捜査官と“ただの”小学1年生の子供が、そんなスパイ紛いなことするはずないわよねぇ?」
私が続けると、あからさまにビクッと肩を揺らす2人。
はぁ、また私に言えないことをコソコソ仕出かすつもりなんだな。
「さぁみんな、少し離れてましょうか!
どうやらこの2人には、私達には言えない秘密のお話があるみたいだから」
そう言って私は子供たちと少し離れた所まで歩いた。
たくっ、後で絶対聞き出してやるんだから。
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「それでクール・キッド?私に話したい事って?」
「前に先生、火傷を負った赤井さんを見たことあるとか言ってたよね?」
「えぇ、あの銀行強盗の事件の時にね」
「あれって赤井さんじゃなくて、黒ずくめの奴らの仲間の“バーボン”って男の変装だったんだよ」
「えぇっ!?」
「本当に赤井さんが死んだかどうか確かめるために、あの姿で赤井さんの周りを彷徨いていたんだ。FBIが彼の死を偽装しているのなら、反応で分かるからね」
「ちょ、ちょっと待って…!
あの火傷の彼が彼らの仲間だったのなら、やっぱり、秀は、本当に……」
「…うん」
「じゃあ今度その火傷の彼がノコノコ現れたら、捕まえて変装ひっぺがしてその正体を!」
「それなら分かってるよ!居場所もね!」
「え、えぇっ!?」
「安室透って名前を名乗ってて、毛利探偵事務所の下のポアロって店でバイトしてるから」
「な、何で…?」