第1章 桜と出会いと
【降谷side】
最悪だ
こんな時間に絡まれるなんて。
しかもなかなかに出来るやつだった。僕の拳を受けてまともに立っていられるなんて
ヒロは起きているだろうか
こんな時間に尋ねるのも悪いかと思ったが、生憎僕には頼れる相手はヒロしかいない。
144号室
諸伏
そう書かれているドアを叩こうとした時
「幼なじみとはいえ、こんな時間に起こすなんてさすがに迷惑なんじゃない?」
驚きながら声のする方へ振り向くと、そこには見慣れない女が立っていた
「おい、ここは男子寮だぞ」
「知ってる。はいこれ」
そう言いながら女は僕に箱を差し出した
一体なんのつもりだろうか
「あんたが今必要なもの。わざわざ医務室から取ってきたんだから」
「頼んだ覚えはない」
「ええ頼まれてないわよ。でも、そのままって訳にもいかないでしょう?
じゃあ私、松田くんの所にも行かなきゃだから。お大事にどうぞ」
そう言って、女は僕の前に救急箱を置くとその場を去っていった。
一体何者なのか。何故僕が怪我をしていることを知っていたのか。
色々気になるところではあるが、このままこうしている訳にもいかないため、置いていかれた救急箱を片手に僕は自室へ戻った。