第1章 桜と出会いと
ボゴ
ガスッ
ドカッ
生々しい音が響き渡る中、私は桜の木の影でその様子を覗いていた
只今の時刻、午前1時半。
何故私がこんなところにいるのかと言うと、単に寝れなかったために、夜風にでも当たろうと散歩に出たからである。
本当なら夜桜を見ながら優雅に歩いていたはずなのに、まさかこんな殴り合いの現場に遭遇しようとは。しかもさっきから人間から発されてるとは思えない音ばかりが聞こえる。
ゴリラか?ゴリラなのか??
どうしよう。教官を呼ぶか。いや、そうすればこんな時間に自室から出ている私まで大目玉だ。
私1人で止めるか。果たして出来るのか?
答えは迷うことなくノーであろう。こんなか弱い女子がゴリラにかなうはずがない。
でも、警察官としてこの現場を見逃す訳にはいかない。というより、変にここから動いて巻き込まれたくない。
仕方がない、しばらくここで待つか。
桜の木を背に、私はその場に座り込んだ。
見上げると、桜が風に揺られていた
月明かりが照らす中、淡いピンクの花びらが舞い散るその様は、美しさと儚さと、そして孤独を感じさせるものであった。
物騒な状況に置かれていることなんて忘れて、私はひとり、この光景に見入っていた。
数十分がたった頃。あの生々しい音と共に、殴りあっていた彼らの姿は消えていた。
恐らくはそれぞれ部屋に戻ったのであろう。
よし、私も戻るか
…医務室ってどこだっけ