第28章 人魚
「でもやられすぎなんじゃないか?
カーペットに天糸を仕込まれて、それを釣り上げるウィンチを天井の照明に仕掛けられていたなんてさ」
確かに、世良さんの言う通りだ。
チェックが足りないんじゃないか?捜査二課さん。
と、口に出したら中森警部にド突かれるので心の中で呟いた。
「チェックしなかったのか!?」
「あぁ、はい。カーペットも照明も水槽がここに展示される数日前に取り替えられたと聞いていたので…」
「カーペットにコーラをぶちまけた客がいたから貼り替えたんじゃが、やってきた内装業者がカーペットの色に合う照明と交換しないかと持ちかけてきたんじゃよ。
丁度水槽を展示するスペースを取るためにこの部屋の美術品を別室に移動させとるとこじゃったから、模様替えもいいかと思ってその案に乗ったんじゃ」
いやいや、その業者完全に変装した怪盗キッドでしょ。
展示会場がここだってバレバレだったのね。
「ま、今回は儂らの負け!撤収じゃ撤収!!
どうせ彼奴はもうここから立ち去ってしまったんじゃから……あたたたっ!」
「と見せかけて、まだこの展示場内にいるんじゃないのか?
だって怪盗キッドっていつも、暗闇にするか煙幕を張って姿を消してるんだろ?
でも今回は明かりがつきっぱなしで、姿さえ見せていないじゃないか!」
世良さんが相談役の頬をつねりながらそう言った。
「キッドが本当に亀ごと宝石を盗ったんなら、まだこの中にいるはずだよ。出入り口を固めてた機動隊員は妙な動きをしてないしね。
となると、今僕がやったようにここにいる全員の顔をつねってキッドが誰かに変装してないか確かめたいところだけど、女の子の顔をつねるのは可哀想だから、何人かの組になってボディチェックし合うってのはどうだ?
キッドなら、宝石付きの亀を今も持ってるはずだしな」
ということで、世良さんの言葉により会場内の全員でボディチェックをすることとなった。
「じゃあ、私は蘭とやるから、世良さんはさんとね!」
「え、えぇっ!?ボク、さんとボディチェックするのか?」
「あら世良さん、私じゃご不満?」
「いや、そうじゃないけど…」
「じゃ、隅から隅までよろしく頼むわね」
「あ、あぁ」
そう言って両手を広げると、世良さんは頬を赤くしながら恐る恐る私の体を調べ始めた。