第28章 人魚
『Three…Two…One……』
ポンッ!!!
小さな爆発音と共に、カーペットが一気に元に戻った。
それにより、私たちは床へと投げ出される。
やばい、体制ミスった!
このままだと頭から床に落ちる……!!
覚悟した時、世良さんが私の体を庇いながら床へと落ちた。
「あ、ありがとう…」
「それより宝石は!?」
世良さんが叫んだ。
そうだ宝石!!
その場にいた全員が水槽へと目を向けるが、既にその中には亀の姿は無かった。
亀の代わりに水槽の中にあったのは、
『シャイな人魚は泡となって我が掌中に消えました』
と書かれたキッドカード。
この状況下で、見事盗んでみせたのか。
ふっ、流石ね。
「ほ、宝石が亀ごと消えただとォ!そんなわけわない!!
探せェ!絶対にこの水槽のどこかにいるはずだ!!
岩のかけとか砂利の中とか!!」
中森警部の指示を合図に、機動隊員達が水槽に群がる。
「ん?こ、これは…怪盗キッドカード」
「なにィ!?」
なんと、鈴木次郎吉相談役の足元にもキッドカードが落ちていた。
「ほ、宝石は頂戴した。信じられないなら確かめてみよ、と書いてあるわい。
今すぐ水槽の金網のロックを解除し、脚立を用意せい!!
儂が直接調べてくれるわァ!!」
そうして、水槽の天井である金網が上げられ、相談役自ら脚立に乗って中を確認し始める。
「どうだ!!いるのかいないのかどっちなんだァ!!」
「……だ、駄目じゃ。
どこにもおらんわ…」
「そ、そんなぁ……」
すると、この事実を知った外の客たちから大きな歓声とキッドコールが湧き上がる。
まだいたのねお客さん達。
「くそォ、犯罪者の応援なんかしやがって…」
「まぁ、仕方ないんじゃないですか?
水槽のガラスは硬質ガラス。それに天井と両脇には特殊合金の金網も貼っていたのに、カーペットで目隠しされてる間に物の見事に縫製を背負った亀が盗られてしまったんですから」
「おいおい、お前は警察官だろうが。
キッドの肩持つんじゃないよ」
「あ、あはは、すみません」