第28章 人魚
「誰だ?あの人」
「警視庁捜査二課の中森警部よ!怪盗キッド専任の警部さんらしいけど」
「そうそう、キッドが絡むといつもいるし」
「へェー、じゃあいつもキッドにしてやられてるのはあのおじさんってわけか!」
あぁ世良さん、そんなこと言ってると…
「痛でででっ!!」
「おいボウズ!!聞こえなかったか!?関係者以外は出てけって言っただろ!?」
ほーら、中森警部がお怒りだ。
「違うんですよ中森警部、世良さんは蘭さんと園子さんのお連れの方です!
てか、ボウズって…」
「おいおい、なんでがここに……」
「まぁ仕方ないよさん!
ボクは今日初めて警部さんと会ったわけだし、それに頬をつねったのはキッドの変装かどうか確かめる為だろうし……ね!!」
そう話す世良さんが、中森警部に思いっきり金的を食らわせた。
これは、截拳道か。痛ったそう……。
中森警部が股間を抑えて悶えている。
「脂汗をかいてるって事は、警部も変装じゃないみたいだね!」
この子怖っ。
と、なんやかんやしていると予告の8時まであと30分となった。
「じゃ、あと30分だしボクトイレ済ませてくるよ!」
「あ、近くのトイレ混んでたから2階のを使った方がいいかも!!」
「混んでたって、園子いつトイレに行ったの?」
「さっきこの館内を回ってた時よ。気づかなかった?」
そんな会話が女子高生たちから聞こえてきた。
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刻々と予告の時間が近づく中、会場の外からは先程まで館内にいた客によるキッドコールが湧き上がっている。
「ねぇ蘭、キッド様登場まであと何分?」
「えっとねぇ……あれ?」
しかし、今回の警備には相当力が入っているようだ。
水槽の周りを固めるのは20名の機動隊員。
そして、2回の通路からサーチライトを構えた100名の機動隊員達が目を光らせている。
しかもライトはバッテリー付きで消えることはないんだそう。
つまり、今回ばかりはキッドお得意の暗闇に乗じて盗む作戦は使えないというわけか。
……どうする、怪盗キッドくん?
「えっ、うわっ!!」
すると突然、床のカーペットが釣り上げられるように水槽を包み込んだ。
私を含むそれに巻き込まれた人達は、水槽にビタッとくっつく形になる。
おいおい何が起こったんだ!?