第3章 ちゃんと見て
時計の針の音だけが響く部屋で、私と父さんの間に静かな時が流れる
父さんの言葉をゆっくり噛み締めながら、私は父さんに伝えるべきことを考えて、口を開いた
「正直、小さい頃は父さんと母さんに構って欲しくて必死だったし、振り向いて貰えるように頑張ってた。
それでも、父さんと母さんは遠くに行っちゃったから、ものすごく寂しかった」
父さんが膝の上で拳を握ったのが見えた
「父さんと母さんは私のことをちゃんと見てくれないって、そう決めつけて、下らない反抗ばかり続けて、私の方が2人のことをちゃんと見ようとしなかった。
ずっと、向き合うことから逃げてたの」
そして私は顔を上げ、父さんと向き合った
目を見て、決意を込めて、思いをぶつけるんだ
「でも、もう逃げるのはやめる。だから父さん、聞いて欲しいの。
私、警察官になりたい。大切な人を守れる、強くて立派な警察官に。
もちろん訓練は死ぬほど厳しいけど、そんなこと目じゃないくらいに良い仲間に囲まれて、毎日を有意義に過ごしている。
今日だって、その仲間に背中を押されたからここに来れた。
私にとって、何にも変え難い居場所があの警察学校にはあるの。
だからお願い。私が警察官になることを許して欲しい」
私の決意に溢れた目を見て、父さんはふっと笑みをこぼした。
「私たちの自慢の娘が決めたことだ。もう否定はしない。
ちゃんとやるんだぞ」
「うん」
私は力強く頷いた。