第26章 スペシャルコーチ
私たちは揃ってふっと笑った。
こうして2人で笑うのなんて何年ぶりだろう。
「そういえば、あの時ヒロが持ってきてくれたお弁当、めっちゃ美味しかったよね!」
「あー、あの3段のお重?」
「そう、運動会のときのお母さんかよって思ったやつ」
「早めに起きて準備してたからな。ヒロの料理はいつでも美味い」
「ほんとにね。おふくろの味」
「言えてるな」
「そうそう、ポアロに行った時安室さんが料理してたからびっくりしたよ。いつの間にあんなに出来るようになったんだね。
しかもあのハムサンドめちゃうまだったし」
「ヒロに教わったんだよ。
ハムサンドは自分で研究した」
「あの〜安室さん?もし良かったら、ハムサンドの作り方を伝授いただけないでしょうか…?」
「企業秘密」
「ちぇ、ケチ」
「冗談だよ。今度ポアロに来たら教えてやる」
「まじ!?やりー」
「ていうか、その“安室さん”ってのやめてくれないか」
「いや、でも安室透なんでしょ?」
「今は違う」
「はいはい。じゃあ、ゼロ?」
「うん、そっちがいい」
「これでもしみんなの前で間違えたらゼロのせいだからね」
「そんなヘマしないだろ?」
「まあね」
こうして、あーだこーだ昔を思い出しながら帰路に着いたのだった。
さっきまでの空気が嘘のように、私たちは笑いあって楽しい時間を過ごした。