第26章 スペシャルコーチ
「何がタイプじゃなかったんですか?」
げっ、こいつ地獄耳かよ…
「さんが安室さんの顔をです!」
「ちょちょっ!?園子さん!?」
「おや、それは残念です。
僕は、さんのこと綺麗な方だと思ってたんですけどね。
初めて会った時から」
……こ、こいつヤバい
平気な顔して嘘つくじゃん。
そして悪いことでも思いついたかのようにニヒルに笑うと、続けて口を開いた。
「やっぱり、さんは僕が送っていきます。
ほら、行きますよ」
「はっ?え、ちょっと!!」
私の腕を掴むと、抵抗なんてお構い無しにあのRX-7の元へと連れていかれた。
背後では園子さんと蘭さんがキャーー!!って言ってるのが聞こえる。
もー!せっかくあの話題を終わらせられると思ったのに更に面倒くさいことになるじゃん!
ーー…そしてこの時、コナンくんに疑いの目を向けられていることなんて私は知る由もなかった。
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無理やり乗せられ私の自宅へ向かっている現在、車の中は絶賛地獄のような空気が流れていた。
どちらも一切口を開かない時間がかれこれ30分は経過している。
はぁ、だから嫌だったのに。
「…昔、みんなでテニスしたことあったよな」
「……へ?」
突然沈黙を破ったかと思えば、予想だにしない話題に思わず素っ頓狂な声が出た。
「ほら、萩原が女子とどうとか言ってたやつ。覚えてないか?」
「え、いや、もちろん覚えてるけど……どしたの突然?」
「今日、久々にラケットを触って思い出したんだ。あの時以来だなって」
「……私も思い出してたよ。あの殺人サーブで萩も松田も私も死にかけたな〜って。
そういえば、肩痛めて数が打てないなんて初耳だったんだけど。あの時はサーブバッコンバッコン打ってたじゃん」
「ああ、言ったら気を使わせると思ったんだ。実はあの後少し肩の調子が悪くなった」
「は、何それ!?だったらあんなに本気でやんなきゃ良かったのに」
「いや、でも少しだけだぞ?」
「少しでもダメ!それで射撃の精度とか落ちたらどうすんのよ」
「楽しくなっちゃったんだよ。久しぶりだったし、それにみんなでテニスなんて滅多に出来ないだろ?」
「まぁ、確かに楽しかったけどさ…」
「ほら」