第26章 スペシャルコーチ
「そっか!ドライアイスが扉のそばにあったから、足の指先がひんやりしてたんだ!」
すると、毛利さんが神妙な顔で話し始めた。
「なるほどな、やっと犯人がわかったよ。
まず、ドライアイスがあったことを裏付けるような証言をした真知さんは容疑者から外していいでしょう。眼鏡のボウズが石栗さんの部屋にいた事を知っていた高梨さんも然り。子供が寝てるそばで殺人をやらかす奴はまずいませんからね。
となると残るはその2人よりも先に石栗さんの部屋へ行き、氷やドライアイスが溶ける時間を十分に稼げた桃園琴音さん、あなた以外に犯人は考えられませんなァ!!」
ここまでだいぶ時間がかかったな、毛利さん。
いつもみたいに寝てないからかな?
琴音さんが行った犯行手順はこうだ。
まず、冷やし中華を作っていた最中にくすねておいた氷をスカートのポケットに忍ばせ、石栗さんが冷やし中華を食べるか確認して来ると言って部屋へ行く。
そして石栗さんを扉の傍で撲殺した後凶器の花瓶に氷を詰めて棚に置き、部屋を出て先程ゼロが言ったトリックで扉を塞ぐように遺体をズラす。
まさか、コナンくんがその部屋で寝ていたとは知らずに。
そうしてキッチンに戻った琴音さんは、何食わぬ顔で食事をして密室殺人を完成させたというわけ。
「そういえば、なくなったっていう合い鍵はどこにあるの?」
「確かに、まだ見つかってないよね」
「そうそう氷ってさ、水が凍るから氷っていうのかなぁ?」
「知るかよんな事!!」
「水が凍るってことは、琴音さんが飲んでたスポーツドリンクのことが言いたいの?
あれは無理よ!言ったでしょ?ほとんど凍ってて中身が中々出てこなかったんだから!」
「もし凍らせる前に鍵を入れても、鍵は重いから外から透けて見えちゃうしね」
「だったらさー、鍵を入れた途端に凍っちゃうような魔法の水があれば出来るかもね!!」
「バーカ!!んなマンガみてーな水があるわけねぇだろ!」
「「過冷却水」」
安室さんと私の声が重なった。
「水が凍るはずの凝固点、0度以外になっても氷にならないで液体のままでいる水のことで、振動などの刺激を与えると急速に凍り始めるんです。
作り方は、均一に冷えるようにペットボトルをタオルで巻き、マイナス5度ぐらいの冷凍庫に4、5時間寝かせるだけ」
私がそう続ける。
