第26章 スペシャルコーチ
「ねぇねぇ!冷やし中華って氷使うよね?」
コナンくんが突然そんなことを言い出した。
ふっ、なるほどそう来るか。
せっかくだし、付き合ってあげよう。
「ええそうね、茹でた麺を冷やす時に氷水につけるから」
「氷ってさ、溶けちゃうよね!」
「なぁに言ってんだボウズ?当ったり前ェだろーが!!」
「だってさ、花瓶が氷でできてたら溶けて勝手に落ちるのになーって思って!」
「バーカ!あの花瓶は銅製だってーの!」
「いや、もし花瓶の中の片側だけに氷を大量に積み上げて、落ちないギリギリの位置で棚に載せて置いたとすれば、時間が経ち氷が溶けれてバランスが崩れて勝手に落ちることは可能です。しかも花瓶の中には水が入っていたようですし」
「で、でもなぁ、たとえ花瓶が自動的に落とせたとしても、遺体を扉の傍には運べねぇだろ?床に引きづったような跡もなかったしよ」
安室さんの言葉に納得がいかない様子の毛利さん。
「そういえば氷ってさー、ツルツル滑るよね!」
またしてもコナンくんが唐突に言い出した。
この子、中々の演技派ね。
「そっか!私わかっちゃった!!
ほら、遺体のお尻の下にラケットがあったんでしょ?そのラケットの下に氷を敷いて遺体を滑らせて動かしたのよ!
ラケットのガットが数箇所歪んでたのがその証拠よ!!」
「さすが園子!やるゥ!!」
「だったら、溶けた水が床に残ってるはずだろ?そうすれば遺体のズボンも濡れるはずだが、そんな痕跡無かったって言うしよ」
「え〜〜そうなの?」
「溶けても何も残んない、魔法の氷みたいなのがあればよかったのにね!」
「それはドライアイスのことね。二酸化炭素が成分のドライアイスなら溶けても昇華して何も残らないから」
「だがなァ、ドライアイスは簡単には運べねぇぞ?氷と違って直接触れねぇし」
「石栗さんに運ばれたんですよ。昼食代わりに彼が食べると言って部屋に持って行ったアイスケーキの中に、ドライアイスが数個入っていたでしょうから。
恐らく犯人は石栗さんを花瓶で撲殺した後、数個のドライアイスの上にラケットを被せて更にその上に遺体の尻を載せ、予めラケットのフレームに通しておいたヒモを部屋から出た後引っ張って遺体を扉に寄せたんでしょう」
あーあ、安室さんが良いとこ全部持ってっちゃったよ。