第26章 スペシャルコーチ
2人目は梅島真知さん。
「そうよ、行ったわ!琴音と2人で石栗くんの様子を見に。
返事がなかったからてっきり寝てると思ってたけど、まさか部屋の中で死んでたなんて…」
「行ったのはその1度きりですか?」
「シャワーを浴びる前にも行ったわよ!これから私が使うからって言いに、前に覗かれたことがあるから。
その時も返事がなかったけど、部屋にはいたんじゃない?
クーラーが聞いてたみたいだし」
シャワーの前後も昼食の片付けやラケットの手入れなどをしており、ずっと誰かと一緒にいたそうだ。
3人目は高梨昇さん。
「ああ、俺も行ったよ、石栗に謝りに。
昼飯前にちょっとやり合っちまったから、悪かったなって」
「それっていつ頃ですか?」
「食事の片付けをしてゴミを出す前だよ。
返事がなかったから怒ってシカトしてるんだと思ったけどな」
「そういえばその喧嘩、亡くなった大学の友人が原因でしたよね?」
「ああ、今年の冬、瓜生って奴が死んだんだ。
仲間内でスキーに行ったロッジの裏で雪に埋もれてな。
2メートル近く新雪が積もっててよ『これならロッジの2階から飛び込んでも死なない』っていう石栗の冗談を多分、瓜生が真に受けて…」
高梨さんが石栗さんの部屋へ行ったのはその1度きりで、後はずっと誰かと一緒にいたとのこと。
それに、リビングのクーラーの調子が悪いから石栗さんの部屋で昼寝をするといいとコナンくんに言ったのも高梨さんだそうだ。
話を聞いた限り、全員不可解な点は無いように思える。
あの太った石栗さんの遺体を動かせるのは男の高梨さんぐらいだと思っていたが、そうとも限らなくなってきた。
それに、なくなったという部屋の合い鍵もまだ見つかっていないみたいだし。
「うーん…ゴミと一緒に捨てられちゃったのかしら」
「ゴミなら、私と蘭も出すの手伝いましたよ!
高梨さんの車のトランクに載せただけだけど」
「持って帰って出すからって、高梨さんに頼まれて」
「なるほど、他に誰かに何かを頼まれたことはある?」
「んーっと、琴音さんにスポーツドリンクを冷凍庫に戻しておいてって言われました」
「凍らせて飲むのが好きなんだって!
でも、その中に鍵とかは入らないと思いますよ?
1度飲ませてもらったけど、中身ほとんど凍ってたし」