第26章 スペシャルコーチ
二人の間に沈黙が流れる中、突然ドンッ!!という大きな音が中から聞こえてきた。
何事かと思い急いで音がした2階へ行くと、そこにはコナンくんを除いた全員が揃っていた。
「ねぇ琴音!あなた合い鍵持ってるでしょ?」
「それが、石栗くんの部屋の鍵だけ昨夜から見当たらなくて…」
どうやら、あの大きな音は石栗さんの部屋から聞こえてきたようだ。
しかし、鍵がかかっていて中に入れないらしい。
「だったら、僕が開けましょうか?
そういうの、割と得意なので」
出たよ、ゼロの悪ーい顔。
そうして、2本の針金を駆使してピッキングを始めた。
ガチャという音が鳴り鍵が開く。
「開いたようですね」
「すごーい安室さん!」
「まるで怪盗キッド!」
「さすが安室さんですね。いつの間に、こんな技術を?」
「セキュリティ会社の知り合いがいましてね、内緒でコツを聞いたことがあるんです」
皮肉混じりに笑顔で質問した私に同じように笑顔でそう返す安室さん。
セキュリティ会社の知り合いねぇ。
「ん?何かが扉を塞いでいる」
「開けるなァ!!」
安室さんがドアを開けようとすると、中からコナンくんがそう叫んだ。
「開けちゃダメだよ。
ドアを塞いでるの、石栗さんの死体だから」
「え?」
死体、だと…?
石栗さんの遺体はドアの前に横たわるようにあった。
死因は、頭部の打撲による頭蓋骨陥没。
遺体のすぐ傍に落ちていた血液が付着している銅製の花瓶によるものだと考えられる。
現場の状況を整理すると、ドアは石栗さんの遺体で塞がっていて窓も全て鍵がかかっていた。
遺体の尻の下には傷がついたラケットがあり、花瓶が置いてあったであろう棚のすぐ下には花瓶が落ちた時についたと思われる凹みが残っている。
大きな音がして昼寝から目覚めたコナンくんの証言によれば、その直後の石栗さんと花瓶に付着した血液は既に乾ききっていたらしい。
よって石栗さんは音がする前に亡くなっており、花瓶は石栗さんが亡くなった後に誰かが棚にのっけてその後落ちたものと考えられた。
以上から、これは不可能犯罪、密室殺人であると思われる。
そして、石栗さんを殺害して花瓶を後から落とした犯人は、元々この別荘に来ていたあの3人の中にいることは間違いない。