第26章 スペシャルコーチ

「じゃあ、私たちは昼食の用意を手伝いましょうか」

「「はい！」」


蘭さんと園子さんに声をかけて、キッチンにいる桃園さんのお手伝いをしようとした。


「あ、さん、少しいいですか？」

しかし、安室さんに呼び止められる。


「え、いやでも…」

「ほらほらさん！行ってきてくださいって！！」
「お手伝いは私と園子でやるので！」

「そ、そう？じゃあ少し行ってくるわね」


2人とも、やはりウキウキ感が否めない。
残念ながら、期待しているようなことではないと思うけど。

そうして、私は安室さんに連れられて庭に出た。













「……なに」

「なんでがここにいるんだ」

「園子さんに誘われたのよ！悪い？
そっちこそなんでいるのよ」

「僕だってコーチを頼まれただけさ！」


そう言いながら睨み合う。


「はぁ、まあいいわ。話はそれだけ？」

「いや、に聞きたいことがある。
沖矢という男とはどういう関係だ」

「……あんたに関係ないでしょ」

「付き合ってるのか」

「は、はぁ！？んなわけ！！」

「じゃあなんであの時、あんなに親しげだったんだ」

「あの時がいつか知らないけど、沖矢さんとはただの知り合い」

「あの男について何か知っているのか」

「何も知らないわよ。
仮に知ってたとしても、あんたに言う義理ないから。
ていうか、尋問されてるみたいで気分悪いんだけど」

「だったら正直に吐けばいいだけの話だ」

「そっちがそんな態度なら、私も聞かせてもらう。
“バーボン”って何？」

「………お酒だろ」

「とぼけたって無駄！
私、あの時聞いたんだから。あなた達の会話」

「あの時ってまさか、もベルツリー急行に乗ってたのか…？」

「ええそうよ」

「なぜ？！」

「あんたが乗るかもって聞きつけたから。
心配だったのよ！また知らないところで危ないことしてるんじゃないかって、もしゼロに何かあったらって…」

「……会話はどこまで聞いたんだ」

「正直、全然聞こえて来なかった。
“バーボン”と、“諸星大”って人名と、“組織”ってのだけ」

「だったら、それ以上は探るな」

「……やっぱり、人には聞いといて自分は何も言わないんだ」


私の言葉で、ゼロは口を噤んだ。