第26章 スペシャルコーチ
それから数十分後、
別荘に移動した私たちは、お医者さんを呼んでコナンくんを診てもらっていた。
「まあ、意識もしっかりしているようですし、ただの脳震盪でしょう。
でも念の為に、手足が痺れたり吐き気や目眩がしたら大きな病院でちゃんと検査してもらうように!」
「は、はい!
ありがとうございました!」
ここは、先程コナンくんにラケットをぶつけた女性、桃園琴音さんの別荘。
テニスコートからの距離が園子さんの別荘よりも近かったので、コナンくんを運びそのままみんなでお邪魔していた。
「ごめんね坊や、汗で手が滑っちゃって…」
「だから言ったのよ!グリップテープをちゃんと巻いておきなさいって!
琴音汗っかきだから」
桃園さんの隣にいるのは、梅島真知さん。
「けど残念だなぁ、俺の携帯の電池が切れてなかったら、その衝撃映像をムービーで撮ってネットにアップしてたのに」
嫌味ったらしくそう話す男性は、石栗三郎さん。
「子供が怪我したっていうのに何言ってんだお前!!」
「じょ、冗談だよ!俺はこの重い空気を和ませようと」
「その冗談が元で、瓜生は死んだかもしれないんだぞ!!」
そんな石栗さんに意見している男性は、高梨昇さん。
ここにいる4人は、同じ大学に通う友人なんだそう。
みんなでよくこの別荘に来てテニスをしているんだとか。
「喧嘩はやめましょうよ、瓜生くんが悲しむわ!
そうだ!そろそろお昼にしない?」
桃園さんの一言で、園子さんと毛利さんのお腹がぐぅぅと鳴った。
「お昼冷やし中華だけど、皆さんも食べます?」
「食べます食べます!」
「いいんですか!」
「ええ!怪我のお詫びも兼ねて!」
冷やし中華という言葉にウキウキが隠せない様子の園子さんと毛利さん。
というわけで、私達もありがたく冷やし中華を頂くことになった。
「んじゃやっぱ俺の分はいいよ!昨夜のアイスケーキの余りを部屋で食べるから」
石栗さんはそう言うと、上の階へと行ってしまった。
「全く、石栗くんはしょうがないんだから」
「そんなんばっかり食べてるからあんなに太るのよ」
「いいよ、ほっとこうぜ」