第26章 スペシャルコーチ
嫌な記憶が蘇ってきたよ。
しかも威力上がってるし。
てか、なんでゼロがここにいるんだよ。
「すっごーい安室さん!」
「ナダルみたい♡」
蘭さんと園子さんが黄色い歓声を上げている。
「いやぁ、中学の時以来ですからお恥ずかしい!」
「ジュニアの大会で優勝したらしいって、ポアロの店長に聞いて驚いたよ!」
「まぁその直後に肩を痛めて、このサーブ数は打てないんですけど。
教えるだけなら支障はありませんから」
いや、あんた7年前にバッコバコ打っとりましたよ。
「でも大丈夫なんですか?体調を崩されたって聞きましたけど」
「ちょっと夏風邪をひいただけですよ!
週明けにはポアロのバイトにも復帰しますし!」
なぁにが夏風邪だ。
どうせ、色んな仕事を詰め込んで忙しかっただけだろうに。
また何も連絡しないで、ベルツリー急行の時も心配したってのに。
「ほら、さん!アプローチアプローチ!!」
「えっ、ちょ、ちょっと!」
園子さんが私の背中を押してゼロ…安室さんの前に差し出した。
「あ、あはは…どうも」
(なんであんたがいるのよ)
「あれ、さんもいらしてたんですね!」
(それはこっちのセリフだ)
お互い笑顔で向き合いながら、流れる空気は地獄のようだ。
「さん!!そいつからッ……」
コナンくんに大声で呼ばれて振り返る。
すると、向こうからラケットが勢いよく飛んできた。
「「危ない!!」」
安室さんと重なってそう叫んだ頃には、ラケットはコナンくんの頭に激突していた。
頭を抑えながら倒れるコナンくん。
「コ、コナンくん!?」
蘭さんが焦りながら駆け寄った。
「蘭さん、触らないで!!」
「頭を強く打っています!急に動かしたり、起き上がらせないで下さい!!」
そうして、安室さんと私もコナンくんの元へ駆け寄る。
「側頭部を打ったようね。出血は無いわ。
コナンくん!コナンくん聞こえる?」
「蘭さん、大きめのタオルを濡らしてきてください!
あと出来れば氷も!」
「は、はいっ!!」
「、状態は」
「意識を失っているけれど、呼吸、脈拍、左右の瞳の大きさに異常なし。嘔吐症状も見られないわ」
「なら仰向けに寝かせよう。頭に気をつけろよ」
「ええ」