第3章 ちゃんと見て
「そっか」
「私、どうすればいいんだろう。
いや、今すぐ帰るべきだっていうのは分かってるんだけど、
父さんと話すのが、怖い…」
「ちゃんはさ、きっとご両親が大好きなんだよ」
「え、」
「自分の話をちゃんと聞いて、自分を見て欲しいって思ってるんじゃない?」
「…そうかもしれない
私、英語が嫌いって言ったでしょ?
でも、小さい時からそうだったってわけじゃないの。
両親が誇りを持って仕事をしてるって知ってたから、そんな両親みたいになれるんだったらって、勉強するのも全然苦じゃなかった。
だけど、両親の仕事は忙しくなる一方で、家に帰ってくることも少なくなっていったの。しょうがないことだって分かってたけど、それでも、すごく寂しかった。
だから、両親の気を引きたくて必死に勉強した。
ただ、褒めて欲しくて。
一生懸命勉強して偉いねって、自慢の娘だよって、頭を撫でて欲しくて。
でも、私の思いなんて届かなくて、両親はどんどん遠ざかっていった
私は、私を見て欲しかっただけなのに」
すると萩は、私の頭に手を乗せて、ゆっくりと撫でた
「ちゃんは偉いよ
今までずっと我慢してきて、ずっと頑張ってきた。
今もすごく頑張ってる。座学も実技も全部、ちゃんが努力してきた証だってみんな知ってる。
ここに居るやつらはみんな、ちゃんの事をちゃんと見てるんだから」
その手が、言葉が、どうしようもなくあったかくて、涙が溢れた
「大丈夫、ここには俺たちしかいないから」
そう言って萩は、私を抱きしめた。
強く、そして驚くほどに優しく
「っ……ふっ…かあさん、っかあさんっ………うぅっうっ、うわぁぁぁぁ」
私は、子供のように泣きじゃくった