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【名探偵コナン】sangría

第25章 ミステリートレイン



「その安室という方とは、どういったご関係なんですか?」

「……別に、ただ顔がタイプなだけです」

「なるほど」


誤魔化すのに頭を使うのが面倒くさくなって、ついこの間と同じ言い訳をしてしまった。
ま、いいよね。どうせ誰だか知らないみたいだし。


もう一度、自分の記憶を辿りながら頭を整理していく。
火事騒ぎが起きて、私は哀ちゃんとゼロを探すためにみんなと別れたんだ。
そして、8号車に辿り着いてから聞こえてきた言葉、
『バーボン』『諸星大』『組織』
これが何を意味するのかは皆目検討もつかないが、少なくともゼロとその潜入先と関係があるのだろう。
バーボン…お酒。
諸星大…人名か?
組織……何の?


「あの、さっきの質問の続きをしてもいいですか?」

「どうぞ」

「沖矢さん、“バーボン”って何だかご存知ですか?」

「…………お酒、ですね」


今一瞬、沖矢さんの肩が揺れた気がした。
それに、微妙に空いた間も気になる。

ーー…この人、何か知ってるな。


「“諸星大”や“組織”に聞き覚えは?」


沖矢さんの答えは無言だった。


「答えてくれないんですか?」

「答えられる質問にしか答えないと最初に言いました」

「なぜ答えられないんですか?私に言えないことなんですか?」


それでも無言を貫く沖矢さん。
私は、これらが何だか知らなければいけないのに。


「答えてください…!
バーボンって何ですか?!諸星大って誰ですか?!組織って何なんですか?!」


ベッドに座ったまま叫んだ。
すると沖矢さんはこちらに向き直って近づくと、私の背後の壁にバンッ!!と片手をついた。
その勢いに、私の肩が揺れる。


「少し、黙れ」


その気迫に、目が逸らせなかった。
いつもは閉じている瞳を片目だけ開いて、私を見つめる。
……それは、私の知っている緑だった。

ベルツリー急行で私が気を失う直前にも見た、この瞳。
あの瞬間目の前に写った、死んだはずの人間。



ーー…赤井さんだ。この人、赤井秀一だ。


そう思った瞬間、私が沖矢さんへ感じていた霧が一気に晴れた気がした。
なぜ、会ったことがあると思ったのか。
なぜ、車を運転する横顔に見覚えがあったのか。
抱いていた違和感が全て点となって繋がる。
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