第25章 ミステリートレイン
「ーー…あかい、さん…」
夢を見ていた。懐かしい夢だった。
目を開けると、そこは見覚えのない場所だった。
「……ここは…?」
「目が覚めましたか」
横になったまま声の方へ視線を向けると、そこには沖矢さんが立っていた。
数秒間沖矢さんを見つめて、はっ!!と起き上がる。
「……えっ!!えと、え、えっ!?」
全く状況が理解出来ない。
ここはどこだ?なぜ私は知らないベッドで寝ていたんだ?
今は何時だ?と言うより、何日だ?
頭が困惑の2文字で覆い尽くされた。
「落ち着いて下さい。
ここは工藤邸の客間です。以前、あなたも来たことがあるでしょう?
今日は、ベルツリー急行での事件の翌日です。
あなた、あれからずっと眠っていましたよ」
順々に整理していく。
なるほど、ここは工藤邸で私は丸一日ほど眠っていたと。
……おいおい、まじかよ。
「あの、いくつか質問いいですか?」
「答えられる範囲なら」
「なぜ私は工藤邸にいるのでしょうか」
「私があの列車から連れてきたからですね。生憎、あなたの自宅を知らなかったので」
「なぜ私は丸一日眠っていたのでしょうか」
「眠らせたのは私ですが、まさかこんなに長く眠ったままとは思いませんでしたよ。
まるで眠り姫のようでした」
「……あ、そうですか」
ダメだ、全く理解できない。
この人といるといつもそうだ。
「あの後、ベルツリー急行はどうなったんですか?」
「あの火事騒ぎの後、貨物車が爆発して最寄りの駅で停車しました。
乗客乗務員は無事です」
「ば、爆発……!?」
私の知らない間にそんなことがあったなんて。
「……っ!!あ、哀ちゃんは無事ですか!?」
「はい。
あの少女は無事に見つかって、阿笠博士と一緒に帰りましたよ」
「そ、そうですか……」
無事なら良かった。
探しに行くと言って、結局見つけられなかったから。
もうひとつ、絶対に確認したいことがある。
「……あの、安室さんは大丈夫だったんでしょうか?」
「安室……が誰だか知りませんが、あの車内で殺された男性1名以外は全員無傷だったとの事なので、多分その方も無事でしょう」
だといいのだけれど。
なんとも言えない気持ちに苛まれながら、私は掛け布団を引き寄せて顔を埋めた。