第25章 ミステリートレイン
『ー…移動しましょう……後ろの貨物車…』
ダメだ、このまま移動されたら全てが謎のまま終わってしまう。
私は、音を立てないよう最大限注意しながら彼らの後を追おうとした。
…だが、それは腕を掴まれたことにより阻まれた。
瞬間的に振り返るとそこにいたのは、いるはずのない、ありえない人物であった。
「っ!?なぜ、あなたがここにッ………」
首にチクリとした痛みを最後に、私の記憶は途切れた。
___真っ赤な夕陽を眺めながら、私たちは束の間の休息時間を過ごしていた。
ここはNY。
私の任務は、この地で出没したという日本人の通り魔を捕まえて本国に身柄を送ること。
しかし、結局追ってた通り魔は姿を消し、捕らえることは叶わずに私の帰国は明日に迫っていた。
はぁ…何の成果も上げられないなんて、日本でみんなに合わせる顔がない。
「はぁ…」
「溜め息か、らしくないな」
今、私の隣で同じように夕日を眺めている男の名は赤井秀一。
今回の合同任務の際に最も時間を共にした人間だ。
どうやら彼は半分は日本人であるらしく、日本語も問題なく話せる。そのためFBI側が多少気を使って、この期間中は彼とバディを組まされたのだ。
FBI側の計らいはとてもありがたいが、正直言うと、彼とはソリが合わなかった。
お昼ご飯に私はバーガーが食べたいと何度も言ったのに、時間が惜しいとか何とか言ってバー食品しか食べれていない。
あの独特の甘さにはもう懲り懲りだ。
ま、それももう今日で終わり。
明日は飛行機に乗って明後日には大好きな日本に到着しているはず。
やーっと美味しい日本食が食べれる。
まずはラーメンを食べに行こう。
とかそんなことを考えながら、再び夕日に目を向けた。
ーー…夕日を見て思い出すのは、いつも同じ。6年前のあの日々。
土手でリレーの練習とかやってたな。
あの時は、まだ全然体力が無くてバテバテだったっけ。
今なら、松田やゼロのあの地獄のような特訓にも多少はついていけるだろう。
私ね、異国の地に1人で来て頑張ったんだよ。
でも、色んな期待を背負って来た割には何も出来なかったけど。
はぁ…日本に帰ってみんなに会いたい……。
……そんなの無理だけどさ。