第25章 ミステリートレイン
「そういえば、世良さんとコナンくん大丈夫かな?」
「え、世良さん?って誰?」
「あぁ、私たちの同級生で女子高生探偵をしてる世良真純って子も、今日この列車に乗ってたんですよ!
それで、彼女もお父さんと一緒に事件を解きに行ってて。
ほら、前にコナンくんが誘拐された時、バイクで犯人を吹っ飛ばしてた!」
あーあの子ね。
あの件はやりすぎだって言われて何度も本庁に呼ばれている姿を見た気がする。
「……え、待って、あの子女子高生なの?」
「あ、はい」
「あの見た目だからいつも男に間違えられるんだって、本人も言ってるんですよ!」
てっきり男の子だと思ってたわ。
まあ、遠目にしか見たことがないから顔までちゃんと見たことはないけど。
すると、この部屋にお邪魔してからずっと私の手を握り続けていた哀ちゃんが突然、さらに強い力で握ってきた。
「ん?哀ちゃん、どうしたの?
……メール?」
すごく強ばった表情で携帯を眺める哀ちゃん。
「ただの広告メールよ」
そう言って、哀ちゃんは私から手を離して部屋を出ていこうとした。
「ちょ、哀ちゃん、どこに行くの?」
「トイレよ。風邪薬も飲むからちょっと長いかも」
「なら、私もついて行くよ」
「来ないでっ!!!
ここで、待ってて……」
「…う、うん。わかった」
すごい剣幕に押され、私は部屋を出る哀ちゃんを見送った。
何だろう、あの哀ちゃんの顔。
何かに怯えているような、でも、何か覚悟を決めたような…。
「やっぱり私、哀ちゃんのとこ行ってくる」
「放っておいた方がいいですって!
ウザがられるだけですよ!」
「でも、あの子、ずっと私の手を握ってたし、何だか様子がおかしかったし…」
だが、ついて行くと言ってあんなに拒否されたんだ。
確かに園子さんの言う通り、無理やり行ってもウザがられてしまうだけかもしれない。
けど……
「私も行きます!哀ちゃんのこと心配ですし!」
そう言って蘭さんが立った。
「うん、ありがとう」
そうしてドアを開けた時には、既に哀ちゃんの姿はなかった。
「あれ、哀ちゃん?どこー?」
「とりあえず、トイレに行ってみましょう」