第25章 ミステリートレイン
「ごめんごめん。
私、今日明日で休むから」
『……は?』
「ちゃんと有給申請は出してあるわ。
伝え忘れてたのはまじでごめん」
『……はぁぁぁぁ』
電話の向こうからどデカい溜め息が聞こえてきた。
やばい、青柳に怒られる。
『全く、さんは何度こういうことしたら…「あぁ!!トンネルに入っちゃうから切るね!
じゃ、後はよろしく!!!」
そうしてブチッと電話を切った。
こりゃ、次出勤した時には大目玉だな。
はぁ、トイレ行こ。
そうして私は、トンネルに入ったお陰で薄暗くなった廊下に出て車両の1番前にあるトイレへと向かった。
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トイレから戻って数十分。
そろそろ、噂の推理クイズとやらが始まってもいい頃だと思うんだけどな。
すると、部屋のスピーカーから車内放送が流れてきた。
『お客様にご連絡します。
先程、車内で事故が発生した為当列車は予定を変更し、最寄りの駅で停車する事を検討中でございます。
お客様には大変ご迷惑をおかけしますが、停車致しましてもこちらの指示があるまで各自の部屋の中で待機し、外に出る事は極力避けられるようお願い致します。
なお、予定していた推理クイズは中止とさせていただきます』
「…事故、ね……」
ちょっとだけ楽しみにしていた推理クイズはしょうがない。
それよりも、事故とは一体何があったのだろうか。
部屋を出て、各車両に1人ずつ座っている車掌さんに聞きに行った。
「すみません、さっきの車内放送で事故があったって聞いたんですが、一体何があったんです?」
「お、お客様困ります、自室で待機していただかないと…」
「あ、すみません。
私こういうものでして」
そう言いながら取り出したのは、もちろん警察手帳。
こういう時にも肌身離さず持っているのが警察官の掟というものだ。
「け、警察の方でしたか!?それは失礼致しました。
実は……」
車掌さんの話によると、一等車である8号車で殺人事件があったそうだ。
今、たまたま乗り合わせた毛利さんが事件の解決に当たっているとのこと。
しかし、この車掌さんもあまり詳しい事情はわかっていないらしい。
こんな時にまで事件かよ。
「何となく状況は分かりました。私も8号車に行きます」
「はい、よろしくお願いします」