第24章 パスリング
「さん!
あれから中々いらっしゃらないなと思ってたんですよ!」
「あはは、実はそこそこ仕事が忙しくて…。
ポアロの閉店時間に間に合うように退勤出来ないんですよ」
「やっぱり、警察の方って忙しいんですね…」
そんなこんなで世間話をしながら一緒にスーパーを回った。
やっぱり梓さんは愛嬌があってとっても可愛らしい。
こういう人が世の中モテるんだろーなーと。
ちなみにハムサンドの作り方を聞いたところ、あれは安室さん考案なので詳しい作り方は梓さんも知らないとのことだった。
「あ、でもいつも蒸し器を使ってるのは見ます!」だって。
ミキサーすら無い女の家に蒸し器があるわけなかろう。
「そういえば梓さんのカゴの中、業務用のものとか色々入ってますけど、もしかしてポアロの買い出しですか?」
「そうなんですよ!いつもは近場のスーパーで済ませるんですけど、たまにこういう大きな所に来て普段買えないものを一気に揃えてるんです!」
「ここ品揃え良いですもんね!私も似たような感じです。
今日は車で?」
「いえ、電車で帰ります!
私、免許持ってないんで…」
「安室さんは?」
「いつもは車を出して下さるんですけど、最近探偵業の方が忙しいみたいで…今日は私一人です!」
なんと、こんな華奢な女の子1人に買い出しを任せるだなんて…。
食料品だけじゃなく洗剤等の日用品まであるから相当重いだろうに。
「もし良かったらお送りしましょうか?
私今日車なんで」
「えっ!!いいんですか!?
あ、でも、お休みの日にご迷惑なんじゃ……」
「いえいえ全然!
むしろ送らせて下さい!梓さんとももっとお話したいですし!」
「それじゃあ、お言葉に甘えて!」
というわけで、梓さんとのドライブが決定した。
もちろん梓さんとお話したいというのは本心だ。
でも正直、最も聞き出したいのは“最近の安室透”のこと。
『探偵業が忙しい』が何だか引っかかるんだよな。
車を停めていた駐車場まで来ると、それぞれの荷物を荷台に乗せて梓さんには助手席に座ってもらった。
「このままポアロに向かっちゃっていいんですよね?」
「はい!お願いします!」
そうして、私たちはスーパーを後にした。