第23章 中継
ちなみに道警本部から入った情報によると、被疑者笛本の病気は末期ガンで、拉致に使った家は架空の会社名義で購入。
玄関先を突き抜けにして天窓をつけたいとリフォーム業者に発注し、この3日間工事を中断するように指示していたらしい。
「コナンくん」
私は今、車を走らせコナンくんを送っているところだ。
助手席に座る彼の名前を呼んだ。
「ん?なに?」
「君に伝えたいことがあってね。
……ありがとう、私の大切なものを2度も守ってくれて」
「そんな、僕は何もしてないよ」
「ううん、君は、私の騎士(ナイト)よ。
私にとって、かけがえのないあの日々を守り抜いてくれた。
本当に感謝してるわ」
そうしてもう一度「ありがとう」と呟いた。
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カラッと晴れて気持ちのいい冬のある日、私たちは伊達の墓参りに来ていた。
「1ヶ月遅れになっちゃいましたね。
さんも、待っていただいてありがとうございました」
「いやいや、私が勝手にあなた達と来たかっただけだから!
気にしないで」
「まぁ高木くん、凍傷とか色々やばかったもんね」
「仕方ないですよ。
自分があの日、交通事故で伊達さんが亡くなったことをちゃんと彼女に伝えていれば、こんなことには…」
「それなんだけど、ナタリーさん知ってたのよ。
伊達が亡くなったこと」
「えっ?」
実は、あの後伊達の実家へ尋ねて知ったことなのだが、伊達が亡くなったあの日にご両親が病院に遺体確認へ行った際、部屋の外で涙をいっぱい溜めたハーフの女性が立っていたのだという。
伊達はあの日の夜、彼女のご両親に挨拶をしに北海道へ行く予定だったそうで、伊達のご両親も連れてってそこで彼女を紹介したかったようだ。
「だから、高木くんのせいじゃないわ」
「でも、やっぱり彼女に渡したかったです。この指輪」
そう言って高木は、伊達の警察手帳に入っていた指輪を握った。
ーー…もしかしたら、伊達とナタリーさんの結婚式が行われていたかもしれない。
伊達の真っ白なタキシード姿が拝めたかもしれない。
あいつらと一緒に、伊達の幸せな日を盛大に祝えたかもしれない。
あったかもしれない、けど、決してあるとこは無い未来を想像して、少し寂しい気持ちになった。