第22章 雨の日は
【降谷side】
雨が降り続ける道を、傘を差して歩く。
行きは凍えるほどの寒さだったが、今は傘のおかげで幾分マシになった。それでも12月の気温は体に刺さる。
僕は、何をしているんだろう。
自分でも分からない。
ただ何かを求めて車を走らせていたら、知らず知らずのうちにあの家を尋ねていた。
暖かい部屋と暖かい白湯、そして抱き締められた時の温もり。
何もかもが僕をおかしくさせた。
さっきまで、冷たく固くなってゆく親友を抱き締めていたからか。
ヒロはもう何も応えてはくれなかったけど、は優しく話し掛けてくれた。
ヒロはもう抱き締めても返してはくれなかったけど、は力強く腕をまわしてくれた。
ヒロはどんなに温めようとしても冷たくなっていったけど、は冷たい僕を温めてくれた。
ヒロの鼓動はもう感じなかったけど、の鼓動はゆっくりと確実に鳴っていた。
ヒロの瞳はもう開くことは無くなってしまったけど、の瞳は僕だけを写してくれた。
ーー……あぁ、目の前のこいつは生きている。
そう思った瞬間、全てを自分のものにしたいと思った。
なくなってしまう前に、奪われてしまう前に、心も体も全て僕の手中に収めてしまいたいと。
そうして、気が付いたらその唇を奪っていた。
どうしようもないほどに柔らかいそれを何度も啄み、吸って、犯して。
息が上がろうがお構い無しに、何度も。
探るように侵入した手は、やせ細った体を這っていく。
ーー…全部、僕のものに
醜い感情が僕を覆い隠そうとした時、携帯のバイブ音がそれを制止した。
僕の下で組み敷かれ、息が上がっているを見る。
自分は大変なことをしでかしているというのに、乱れたを本気で綺麗だと思ってしまった。