第22章 雨の日は
あの後の言葉が無ければ、僕はどこまでいってしまったのだろうか。
今冷静に考えて、自分を殴り倒したい。
にだって殴られて当然だと思ったのに、それでもあいつは謝るなと言った。
今だって、こうして傘を借りている。
僕はの優しさにとことん甘えてしまったんだ。
これから先も多分、に会えばまた同じように甘えてしまうだろう。
そんな僕をは決して拒絶しない。
でも、それではダメなんだ。
ゼロとして、公安として、警察官として、僕は自分を殺して冷徹に任務に当たる必要がある。
大切なものを、この国を守るために。
自分が落ち着くまでは離れよう。
自分の中の正義というものが、再び揺るがなくなるまで。
そう心に決めて、僕は闇夜に車を走らせた。
______
【side】
3年前のこの日を境に、ゼロと一切連絡が取れなくなった。
そして後悔した。
あの時、ドアから出ていくゼロの背中を見送ってしまったこと。
引き止めなかったこと。
行って欲しくないと言えなかったこと。
駐車場に車を置いて、自宅のドアを開ける。
既に日は沈んでいた。
玄関に入ってまず目の前に広がるのは、3年前のあの時と何ら変わらない暗い部屋。
ーー…決めた。
私は、何がなんでも大切なものを守る。
あいつらが守り抜いたこの日本も、7年前のあの日々も、ゼロも、もう誰にも何も奪わせない。
そう決意を固めて、私は部屋の明かりをつけた。
照明がぱっと部屋中を照らした。