第21章 ポアロ
「ご注文はどうされます?」
「えっと、アイスコーヒーを1つ。
それと、少しお腹を満たしたいんですけどおすすめとかありますか?」
「それだったら、このハムサンドがおすすめです!
最近改良をして、美味しさがマシマシになってます!」
「じゃあそのハムサンドも1つ」
「かしこまりましたー!」
こういう喫茶店に来ることは中々ないから、なんだか新鮮だ。
シンプルかつ暖色にまとめられた内装でとても落ち着く。
たまにはゆっくりこういう所に来るのも悪くないな。
そんなことを考えていると、女性が先にアイスコーヒーを持ってきてくれた。
ストローを数回回して一口飲む。
ん、美味しい…!
コーヒーってこうも味が変わるものなんだな。
最近は缶コーヒーばっかりだったから、ちゃんとしたものを飲むとその美味しさに驚かされる。
「あっ!ごめんなさい!!これミルクです!」
女性が慌てて小さな銀のミルクピッチャーを持ってきた。
「え、ああ大丈夫ですよ!私このまま飲みますので」
「え、でも安室さんが、必ずミルクをつけてくれって…」
___『ねぇゼロ、何飲んでんの?』
『コーヒー』
『一口ちょーだい』
『はい』
『…………まって、これブラック?』
『当たり前だろ』
『私、ブラック苦手なんだよね。
ミルクがなきゃ…』
『なんだよ、子供舌だな』
『うるさいな!いいでしょ別に!
一口どーもありがとうございました!!』
『強がるなよ。ほら、もう一口あげてもいい』
『もう結構でございます』
_____
ふとそんな事を思い出した。
…覚えてたんだ。
でも、あれから7年もたっている。
眠気覚ましにコーヒーを飲んでいるうちに、私だってブラックくらい飲めるようになったんだ。
……でもまあ、せっかく出されたんだから無駄にする訳にはいかないか。
「ありがとうございます。やっぱり、入れさせてもらいますね」
「はい!もちろんどうぞ!」
そうしてミルクピッチャーからフレッシュミルクをコーヒーに落とした。
たまには、甘いコーヒーも悪くないかもね。