第21章 ポアロ
「さん、今日はやけに真面目ですね」
「何その言い方。私はいつでも真面目でしょ」
昨日のことを思い出しながら今日中に片付けなければいけない仕事に取り組んでいたところ、青柳が後ろから茶々を入れてきやがった。
ちょっと癪な言い方だな。
「今日はこの後行かなきゃいけないところがあるのよ。
だから早く仕事を終わらせたいの」
「行かなきゃいけないところって?」
「秘密」
「もしかして、男っすか…?」
「うーん、まあそんなとこ」
「うわ、マジか」
てか話してる暇無いんだって。
時間に間に合わないかもしれないんだから。
と、そんなこんなで手早く報告書7件を片付けて、必要な部署に印をもらいに行って、外国人容疑者を取り調べする為に在留資格延長の申請と取り調べの際の通訳をして、身柄を引き渡す際の書類作成をして、その他諸々の仕事を終わらせて現在時刻は午後5時過ぎ。
よし、これならギリ間に合うな。
「ごめん、私先に上がるわね。何かあったら連絡ちょうだい」
そうして、部署のみんなを残して警視庁を後にした。
「最近サボりすぎてて忘れてたけど、あの人めちゃ仕事早かったんだわ」
「あの量を一日で、しかも5時までに終わらせるとかバケモンだろ」
「書類に不備は一切無し。おまけに俺らのフォローまでしてったぞ」
「改めて、さすが“鬼才”って感じだな」
そんな会話が、部署内ではあったんだとか。