第20章 夜想曲(ノクターン)
「…ねぇ、あの安室透って人、何してる人なの?」
今度は私がコナンくんに問いかけた。
本人に聞いてもどうせ教えてくれないだろうから、これくらいコナンくんに聞いてもいいよね。
「安室さん、小五郎のおじさんの弟子で私立探偵をやってるんだ。
で、探偵事務所の下のポアロって喫茶店でバイトしながらおじさんから色々教わってるんだって」
「そうなんだ。
……私立探偵に喫茶店のアルバイトか…」
なんとも不思議な設定でやってるんだな。
完全に将来が心配になる男じゃん。
「教えてくれてありがとうね」
「うん!」
近々、絶対問い詰めに行ってやるんだから。
「さん」
コナンくんとお話していると、後ろから名前を呼ばれた。
振り返ると、そこには沖矢さんが。
色々あり過ぎて沖矢さんの事忘れてたわ。
「沖矢さん、連絡ありがとうございました。
おかげで早くに対処することが出来ました」
そう言って頭を下げる。
すると、途端に私の腕を掴んでスタスタ歩き始める沖矢さん。
愛車のスバル360に私を乗せる気らしい。
「あの、沖矢さん?どうしたんですか?」
「早くここから、彼から離れてください。危険です。
私が自宅までお送りします」
沖矢さんは振り向かずにそう言い放った。
彼って誰?危険って何?
前回同様何も教える気は無いらしい。
掴む手には力が入っていて少し痛い。
……もう、何なの…!?
その瞬間、私は掴まれた腕を勢いよく振り払った。
「いい加減にして下さい!!
この間の米花百貨店といい今回といい、毎回毎回危険危険って、もううんざりです!!
何がそんなに危ないんですか?
何で何も教えてくれないんですか?
私がそんなにひ弱に見えますか?
こっちが黙っているからって好き勝手して。
本当、何なの……?自分の身くらい自分で守れるのに……。
今日は送って頂かなくて結構です!!
自分の車がありますし、それに、これから現場に来る警官をここで待たなければいけないので!!!」
息が乱れるほどにそう叫び、肩が上下する。
……完全に八つ当たりだ。
最近色んなことがあったから、頭がこんがらがっていた。
そこにトドメを指すように“安室透”の存在がのしかかって来た。
もう、訳が分からないんだ。