第20章 夜想曲(ノクターン)
相変わらず何の説明もなく状況が全く掴めないが、とにかくコナンくんに危険が及んでいるということは理解した。
それに、沖矢さんが私を信頼して連絡している。
私は自分のやれる事をやるまでだ。
「それで、コナンくんは今どこに?」
『犯人が車で逃走しているようです。阿笠博士の発明した発信機でコナンくんの居所が掴めるので、それを頼りに追跡します』
阿笠さんってすごいんだな。
『くれぐれも言っておきますが、あなたは動かないで下さい。
私が連絡をしたのは、あなたに警察を動かして欲しいからです。
あなたが自ら行動する必要はありません』
少し強めの口調で言う沖矢さん。
残念ながら、ここまで話を聞いてじっといていられる性分ではないんだな。
「それは、私に連絡をした時点で不可能ですね。
ここまで話をしておいて動くなだなんて無理にも程がある。
今から私も車で向かいます」
『言うことを……
「聞きません。
数回しかお会いしてませんが、私のこの性格をご存知でしょう?
それで、コナンくんが乗っているという車は今どこに?」
しばらくの沈黙。
そして、諦めたのか沖矢さんは静かに口を開いた。
『……大石街道を走行中だそうです』
「分かりました」
『くれぐれも、危険なことはしないように』
「それは……はい、頑張ります」
そう言って電話を切った。
急いで駐車場へ向かい、車に乗り込む。
それにしても、沖矢さんはなぜそこまで私の安否を気にするのか。
本当、掴みきれない人。
そうして私は、大石街道へ向かっていった車を走らせた。
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しばらくして、目的の大石街道に入った。
しかし大石街道と一口にいっても鳥矢町から杯戸町、そしてその先まで続く大きな道路だ。
闇雲に走っていても見つからない。
沖矢さんに連絡しても、きっと運転中だろうしな…。
このまま直線上に進んでもしょうがないので、ここら辺で一旦路地に入ろう。
そうして私は、横道に入って住宅街へ車を走らせ続けた。