第19章 部下との再会
【青柳side】
新しい部に配属されてから半年が経った。
配属の時、俺の教育係が本庁では結構有名な超仕事が出来る人だって聞いた時は正直ビビった。
同時期に配属された同僚達からは「どんまい」ってどれだけ言われたことか。
でも、イメージと違って話しやすいし、意外と気さくな人だった。
噂通り仕事はめっちゃ早いけど。
しかも、英語にフランス語にロシア語に中国語まで出来るらしい。
何か、元々英語が苦手だったけど、配属されてからの1年間で苦手な英語含め全部習得したんだとか。
「配属されたては色々あってね、1ヶ月間1日も休まないで仕事してたから。
語学もその時に勉強したの」
とさんは言っていた。
色々って何があったのか気になったが、何となく本人には聞けずに他の先輩や上司に聞いてみた。
でも、どの人も詳しい内容までは教えてくれなくて、とにかくその時期のさんは人が変わったみたいにずっと仕事してたと教えてくれた。
そんな仕事が出来て美人で語学力がある俺の先輩は今、フランスにあるICPO(インターポール)本部で2ヶ月間職員として働いている。
うちの部署の仕事は他国との情報交換などが主で、その際は大体ICPOを介して行われる。仕事のためにもICPO本部とは深く繋がりを持つ必要があるんだ。だから数年に1度数ヶ月間、警視庁から1人派遣しなければならないらしい。
もちろん結構重要な案件なので、俺みたいなペーペーには到底無理な話。
それで抜擢されるさんは流石だ。
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そしてフランスから帰った後もさんは何度か海外への出張を重ねて、俺が配属されて1年経った頃にはNYでFBIとの合同任務にまで派遣された。
あの人どんだけ頼りにされてんだよ。
その任務では残念ながら成果は上げられなかったらしいが、FBI長官がさんの事を相当気に入ったらしく、そこからの推薦という形で20代で警部に昇任した。
普通はどんなに早くても30歳を過ぎなければ警部の昇任試験は受けられないため、この異例の出来事に周りはさんを“鬼才”って言って持て囃した。
本人はこの二つ名に不満があるらしいけど。
たった2歳しか変わらないのに、さんは俺の直属の上司になった。