第2章 唸れ体育祭
1走目は伊達
私たちは第1レーンのため、1走目はセパレートゾーンの後方から始まる。スタートと同時に勢いよく走り出し、設けられていた距離なんてお構い無しにどんどん追い上げていく。
そして、カーブが終わる頃には他と差を開いて1番で2走目へとバトンを繋いだ。
「頼んだぞ!」
「おうよ」
2走目は萩原
女子からの黄色い歓声が響く中、伊達が開いた差は縮められることなく堅実に3走目へと近づいていく
カーブもストレートもスマートにこなし、危なげなく次にバトンを繋いだ。
「陣平ちゃん!」
「任しとけ」
3走目は松田
自称「風の松田」ということもあって、先程開いていた差はさらに広がっていく。異名のダサさは否めないが、それでも実力は確かなのだと目に見えて実感させられた。
「!走れ!!」
「うん!」
そうして迎えた4走目
松田からバトンを受け取り、ひたすら足を動かす。
周りから色んな声が聞こえる気がするが、そんなのに耳を傾けていられる余裕は無い。
後ろから足音が聞こえてきた
今はどれくらいの差なのだろうか
もしかして、もうすぐそこまで迫っているのではないか
気が着いたら、開いていたはずの差は縮まり、後ろを走っていたはずの人は隣にいた
どうしよう、せっかく3人がここまで追い上げてくれたのに
どうしよう、私のせいで…
「!!」
諸伏くんが叫ぶ声がはっきりと聞こえた
最後まで全力で。
そうだ、私は私に出来ることをやる
そうして、5走目へとバトンを繋げる
「ッ、ヒロ!!」
「うん!あとは任せて!!」
勢いよくヒロが走り出した。
ほぼ追いつかれていたはずなのに、その差は再び開こうとしていた
しかし、相手も簡単には行かせまいと開きかけた差は再び縮まる
「頼む!!」
「ああ」
均衡した状態のまま、バトンはアンカーの降谷へと繋がれた。
綺麗なランニングフォーム。無駄のない動き。
競り合っていた先程の状態から、一気に追い上げた
このまま、このまま…!!
「ゼロ!!走れ!!」
「ゼローー!!」
「このまま突っ走れ!!」
「あと少し…!!」
そうして、ゴールテープが切られた