第18章 危険なエリア
「死体を埋める所は見られるわけがない…ということかしら?」
「あ、いや……」
オジサンが明らかに動揺する。
「恐らくあなたは登山初心者だ。吹雪いているのに山小屋から離れて埋めに行くわけがない。
となると、その時登った山の山小屋のそばを掘り起こせば見つかるでしょうな…。
13年前にあなたが殺して埋めた登山家の遺体が!」
毛利さんからの言葉を皮切りに、オジサンはガクリとその場に崩れた。
オジサンは13年前会社の金の遣い込みを行っており、その事が上司である丸岡大策さんにバレてしまったのだという。
丸岡さんは、オジサンを山へ連れていき雄大な景色を前に改心して欲しかったんだそう。しかし、逆にそれを利用してオジサンは丸岡さんを雪崩事故に見せ掛けて殺害した。その後、オジサンが行っていた汚職を丸岡さんに擦り付けたそうだ。
ちなみに、仕掛けられていた爆弾やオジサン自身が体に巻きつけていた爆弾は全て偽物だった。
「以上で依頼された件は終了ですが、ご満足頂けましたかな、瀬田さん?」
毛利さんが先程の彼女に問いかけた。
「あ、はい!やっぱり分かってたんですね…私が声を変えて電話した依頼者だって。
まさか、あの人を自白に追い込んでくれるだなんて!
ホント、すごいです!たったあれだけのヒントで12月29日の雪山の遭難事故だって気づくなんて!」
彼女は私と毛利さんを交互に見て、驚きの声をあげる。
「ああ、それは……」
「手旗信号は声の届きづらい海か山で使われていて、送られてきた信号の意味が『うめたのみたよ』なら海ではなく山。
さらに、不自然に三角形にちぎられたレシートは雪山を連想させ、Tシャツの赤は殺人を暗示している。
雪山で殺人ならば遭難事件絡み。
通常、遭難事故で分刻みの時間は出ないため12時29分は12月29日を意味していると思われる……」
毛利さんが、私が思っていたことを全部話してくれた。
でも、さっきまでの様子と少し違う。
眠ってないし、話し方もいつも通りに戻っている。
「……って書いてあんだよ!知らねー奴からさっき届いたこのメールにな」
メール、だと…?
「そのメール、ちょっと見せて貰えません?」
「え?ああ、構わないが…」