第18章 危険なエリア
「た、確かにそうですけど、爆弾犯に仲間がいてその人が見張っていれば…」
「それは無いわ。もしそうなら、このフロアを占拠する時にその仲間が携帯電話まで没収するはずよ」
「じゃあ、どうやって1人で売り場から目を離さずにオジサンに爆弾を巻くなんてこと……」
「ここで巻いたんじゃない、最初から巻いてきたのよ…
そうよね?爆弾を巻かれたオジサン?」
恐らく、12時29分になっても誰もあのTシャツを買いに来ないのを見て、これは自分をここへおびき出すための送り主の罠だとオジサンは思ったのだろう。
のこのこやって来て青い顔をしている自分を、どこかで見て笑っているんだろうと。
「だからあーたは、予め体に巻いていた爆弾とフロアに置いた爆弾で客達を閉じ込め、忌々しいその送り主を炙り出そうとしたってわけだ!
まあ、そんなややこしい方法を取らなくても俺はすぐに送り主が誰か分かってたがな…」
「レシート、ですよね?毛利さん」
「ああ、普通の客は毎週日曜日の12時半頃に買いに来ることは出来ても、正確に12時29分のレシートを貰うことはできねーよ!
つまり、送り主はレシートを出した本人。
赤いTシャツを扱っていたフィットネス用品売り場のレジ係である、あなたしかありえないんですよ」
毛利さんに指された彼女の名は、瀬田麻衣さん。
旧姓丸岡麻衣。13年前の雪山で雪崩に巻き込まれて亡くなった丸岡大策さんの娘である。
事故として処理された父の死に納得がいかず、父親の死後に発覚した汚職疑惑がオジサンに擦り付けられたものだと知ると、父親はオジサンによって殺されたのだと確信したそうだ。
「い、いや違う!!あれは事故だ!!雪崩が起こした、不運な事故さ!!」
「オジサン、まだ気づいていないの?彼女が父親を殺したのはあなただという決定的な証拠を握ってるってこと」
「しょ、証拠だと……!?」
「彼女がオジサンに送った13着のTシャツ。
実はあれ、手旗信号になってるのよ。
送られた順に読むと『ウメタノミタヨ』。
あなたが丸岡さんの死体を埋めているところを見たという意味になるわね」
「…ハッハッハ!やっぱりハッタリだったか!!」
「ハッタリですって?」
「だってそうだろ!?
あの時は目も開けられないぐらいに吹雪いていて……」