第17章 難攻不落の
そして数日後、
「おいおい、伺うって高校にかよ……」
そう、私は今都内にある江古田高校の門の前で彼を待っていた。
もちろん1人で。
「あら、あなたが黒羽快斗くん?
こんにちは、警視庁組織犯罪対策部国際犯罪対策課のといいます。
初めまして、ではないわよね?」
警察手帳を手にそう名乗ると、黒羽快斗くんが後退りする。
遠くの方から「え!?何あの綺麗な人!」「一緒にいるのって黒羽くん?」「やばっ!スーツ女子やばっ!!」というような声がチラチラ聞こえてきた。
「と、とにかくここはやべぇから!どっか別の場所で!!」
「あら、あなたから誘ってくれるなんて嬉しいわ!
そうねぇ、ここから少し離れたカフェなんてどう?」
そうして私は黒羽快斗くんを車に乗せて、カフェへ向けて走り出した。
「……何の用だよ」
「これを返しに来たって言ったでしょ?
安心して、あなたを捕まえようと来たわけじゃないから」
そう言って、私は後部座席に乗せておいたジャケットの入っている紙袋を彼に渡した。
「あんたも律儀だな」
「まあね、あの日迷惑を掛けたのは私だから。
私の自宅が分からないから、わざわざ毛利さんの所に置いてってくれたんでしょ?」
「あの廃ビルの屋上に置いてけるわけねーからな」
「ふふっ、ありがとう。感謝してるわ」
そんなことを話しているうちに、目的地であるカフェに到着した。
「それで?ジャケットはもう受け取ったが、他に何か用でも?」
「あら、用があるのはあなたの方なんじゃない?
私に聞きたいことが山ほどあるでしょ?」
頼んだアイスコーヒーをストローで掻き回す。
ちなみに彼はチョコレートのアイスクリームを頼んでいる。
案外高校生らしい所もあるんだな。
「……じゃあまず、何でオレがキッドだとわかった?」
「ああ、それは正直勘。
あなたと黒羽盗一さんが似ている気がしたから、調べたのよ。
で、ダメ元であなたの高校へ行ってカマかけてみたら、あからさまな反応をするもんだからさ、それで確信したってわけ。
だから、証拠も何も無いからあなたを捕まえることは出来ないし、このことは誰にも言っていない。
もちろん、あの小さな探偵さんにもね」
私の言葉を受けて「やっちまった……」と項垂れる黒羽快斗くん。