第17章 難攻不落の
「好きだなオメー、女に化けるの」
「……ああ、こっちの方が萌えるんでね」
そうして金庫部屋で対峙する、探偵と怪盗。
「あの時、慌ててワゴンをおっちゃんにぶつけた所まではドジっ子の演出だったんだろーが、そのはずみにおっちゃんが小銭を落としたのは計算外、迂闊にも指紋がつかない細工を指にしていなかったお前は、素手で拾う訳にはいかず、何もせずシカトするのも不自然に見えると恐れた。
だから水をぶちまけたんだろ?小銭が濡れちまったら、ハンカチで拭きながら拾ってもおかしくねぇからな!」
「ホー?それだけでオレがキッドだと?」
「あの奇妙な予告状さ。
文章の1番下の文字を左からつなげて読むと『てをかしてくれ』になる!
つまり、あの予告状は相談役自らが書いた怪盗キッド宛の依頼文だったってわけさ!」
メイドに扮している際の「仰ってませんでした?『手を貸してくれ』って」の一言で相談役にキッドだと正体をばらし、その後機動隊を追い払う作戦を授けたのだろう。
それで相談役があんな見え透いた嘘を着いたのも頷ける。
クローゼットで縛られているのは、恐らくあの使用人。
相談役の変装をさせた彼を針金と共にクローゼット内に閉じ込めたのだ。
「んじゃ、何でオレがここに呼ばれたかもう分かってんだろ?
オレの策だと知ってて警察を追っ払ってくれたんだから」
「ああ、最近の相談役はの妙な行動でな!
毎晩夕食を自室で取るようになったのは、新鮮な水を得るため。
その夕食の皿を2枚ずつくすねてたのは、片方に水を注ぎもう片方に餌を盛るため。
そしてその2枚の皿を金庫の下の隙間に杖で奥まで押し込んでたってわけさ!『もう少しの辛抱じゃ』とか声をかけながら」
「ああ!不運にもこの鉄の狸に飲み込まれた、愛犬ルパンのためにな!」
ワンッ!!と元気よく鳴きながら、開けられた金庫のからルパンが出てきた。
元気そうで何よりだ。
「相談役はルパンにつけられたバンダナの裏にこの鉄狸の開け方を示したメモを挟み、毎回これを見ながら開けていた。
しかし、この金庫の扉を閉めた後でルパンがいない事に気づき、切羽詰まってオレに泣きついて来たってわけだ!
こんなバカげた金庫を短時間で開けられるのは……
この怪盗キッドしかいねーからな!」
そう言って、メイド姿からいつもの白い衣装に早変わりする怪盗キッド。