第2章 唸れ体育祭
「お疲れ〜ちゃん
お題なんだったの?」
「ただいまー
え、お題?男前な人」
「…男前な人?」
「うん、男前な人」
「んだよそのお題、クソじゃね」
「だよね!私も思った。考えたの誰だよ」
「なるほど、それで伊達班長だったのか!」
「伊達だったら誰も文句言えないでしょ」
「なんか俺、褒められてんのか貶されてんのかわかんねーな」
「褒めてる褒めてる」
「男前だったら僕も負けてない」
「お題が“ゴリラ”だったら間違いなくゼロだったね」
「ゴリラじゃなくて残念だったね降谷ちゃん」
「お前ら、後で覚えとけよ」
ゼロの渾身の睨みで、私の借り物競争は幕を閉じた
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お昼を食べ終え、これより午後の部が始まろうとしていた。
午後の部一発目は、松田がやる気満々だったあの騎馬戦だ。
そのため、出番がない私は座席で死闘が繰り広げられる様子を観戦する。
入場門から騎馬を組んだ男子達が入場してきた。
なるほど、上が松田か。だからあんなに気合い入っていたのね
各教場4組ずつの騎馬が並んでいる。
ルールは簡単で、教場ごとの時間内に取ったハチマキの合計で順位が決まる。ただし、ハチマキを取られた騎馬はその場で崩し、元の位置に戻らなければならない。
ハチマキを取られる前でも、騎馬が崩れてしまったらそこで失格。同様に元の位置で座って待機。
そしていよいよスタートの合図が鳴った。
途端に全ての騎馬が動き出し、あっという間に砂埃で様子が見えなくなった。足音や声のみがこちら側まで聞こえてくる。それらの音だけでも、この戦いが壮絶なものなのが伝わってくる。
恐るべし、警察学校の騎馬戦
しばらくして終了の合図が鳴り響き、全員が定位置へと戻った。
そして、教場ごとの結果が発表された。
なんと、総ハチマキ数の役八割を取って、私たちの教場が1位になった。
他との圧倒的な差に、驚きを通り越してもはや困惑している。
「陣平ちゃん、それうちのやつじゃない?」
「訳わかんなすぎて適当に取ってったら、仲間のも取っちまってた」
「何やってるんだよ全く」
「まあまあ、結果的に1番取ったんだし、いいじゃんゼロ」
「そうだぞ!おかげでうちが1位だ!」
この調子なら、総合優勝も望めるかもしれない