第17章 難攻不落の
チャリーンと毛利さんの手から小銭が落ちていく。
そして、ワゴンの上に乗った水も見事にメイドさんが倒し、毛利さんにかかってしまった。
「す、すみません!!」
「い、いや…」
頭から水を被った毛利さんと小銭たちはビショビショだ。
「コレ!何をやっておる!?
食事を早く持って来んか!!」
待ちくたびれて痺れを切らした様子の相談役が叫んだ。
「フン、使用人といいメイドといい使えん奴ばかり雇いおって!」
そう言いながら、相談役は毛利さんの落とした小銭を拾って投げ渡す。
「あのー旦那様、ご用ってなんでしょうか?」
「用?」
「あれ?仰ってませんでした?『手を貸してくれ』って」
「あ、ああ!そうじゃったそうじゃった!
まずは部屋に行ってからじゃ!」
そう言って、メイドさんと相談役は食事と共に部屋へ移動していった。
ふーん、『手を貸してくれ』ね…
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「何ィ!?防犯装置をいったん止めるだと!?
これからキッドが来るかもしれないのに!?」
「ああそうじゃ!金庫の中をチェックするのは毎日の日課じゃからな!
まあ2~3分程度で済む!それまで決して中を覗くでないぞ!」
そうして、相談役は杖を持って金庫部屋へと入っていた。
鶴の恩返しみたいだな。
「お静かにお願いします。相談役はいつも誰かとお話されているみたいなので。
ひょっとしたら、独り言かもしれませんが」
「まさか、金庫の開け方を忘れてしまって誰かに聞いてるんじゃ?」
相談役のボディーガードさんと中森警部がそう話していた。
それにしても、一体どういうわけだろう?
最近、夕食は部屋で1人で食べて、何故かその皿が2枚ずつ消える。
その後の金庫室のチェックの際は、どういうわけだか杖を持参し、チェック中は誰かと会話している。
そしてあの奇妙な予告状…。
ーー…「言ってませんでした?『手を貸してくれ』って」
もしかして…!?
「よーし!チェックは済んだ!後は勝手にするが良い!
そうそう、これから外出するが構わんでくれ。
茶木君と会食の約束をしておったのをすっかり忘れておったわい!」
そうして相談役は「車のキーじゃ!裏につけておいてくれ!」ボディーガードさんにキーを投げ渡した。