第17章 難攻不落の
「中の広さは奥行4メートル弱の約6畳、厚さ50センチメートルの鉄板に囲まれた鋼の小部屋じゃよ!
何しろ戦時中に子供の頃の儂が、親と一緒に中に入って空襲を凌いだぐらいじゃからのォ!」
「じゃあ、空気穴とかあるんだね」
見ると扉の下には3センチメートル程の隙間があり、中に設置された棚の上には小窓もあるそうだ。
てことは、あの中に入っても水と食糧さえあれば生きられはすると。
「実は、中からは簡単に開けられんじゃが、外からの開け方を知っているのはもう儂しかいなくなってしまっての…」
「んじゃあ、近くで見せてもらいましょうか!」
「待たれィ!!」
意気揚々と部屋の中に入ろうとした毛利さんを制止する鈴木次郎吉相談役。
「確か、毛利探偵はタバコを吸われておりましたな?
1本拝借できるかな?」
「え、ええ。
じゃあ1本……ん、ありゃ?タバコ切れちまってるじゃねぇか!」
「あ、じゃあ私のをどうぞ!」
「あれ?さんタバコ吸うの?」
「ああ、ごくごくたまにね」
「では失礼して」と言いながら、相談役は私のタバコを1本ポンッと金庫部屋に投げ入れた。
途端にゴゴゴ…!!という音が鳴り響いて、部屋の壁伝いに鉄格子が一気に這い出てくる。
「い、一瞬にして鉄格子が部屋を囲みやがった…」
「重量センサーじゃよ!
タバコ1本分の重さですら反応する!」
だから家具が1個も置いてなかったのか。
はは、お金持ちは次元が違うわ。
「これで分かったじゃろ?彼奴は金庫に近づくことさえ出来んという事が!!」
錦座といいこの金庫部屋といい、囲むのが本当に好きなんだな相談役は。
「秋津くん!中に転がっておるタバコを始末しておいてくれ!」
「あ、はい!」
秋津と呼ばれたこの頼りなさそうな男性は、先日雇った新入りの使用人らしい。
「あのー、このタバコはそちらの女性にお返しした方が…?」
「馬鹿者!!床に落ちた物を吸わせる気か!?
さっさとゴミ箱に捨ててこんか!!」
「は、はいぃぃぃ!!」
「全く、使えん奴じゃわい…」と相談役が嘆いた。
まあそう言ってやんなさんな。