第17章 難攻不落の
予告状に書かれている『大金庫』とは、
幕末にその名を轟かせたカラクリ師・三水吉右衛門が死ぬ間際にこしらえたという、鈴木家に代々伝わる難攻不落の大金庫『鉄狸』のことである。
今回のキッドは、金庫の中身よりもその金庫自体に興味があるようだ。
しかし、予告状の中身がいつもの横書きかつキザな内容では無い上、怪盗キッドマークが胡散臭かったために、模倣犯を疑った鈴木次郎吉相談役は警察に通報しなかったそうだ。
今回は怪盗キッドは現れないだろうと。
それを受けて、中森警部は怒り心頭。
そんな鈴木次郎吉相談役の言葉を完全に無視して、機動隊とともに大規模な警備網を張るらしい。
___3日後、「月が闇に呑まれる」新月の夜。
「えぇ!?偽物かもしれない!?
今回予告状を送ってきた怪盗キッドが!?」
「じゃあ何で呼んだりしたんだよ?」
鈴木園子に呼ばれ、鈴木次郎吉邸に訪れた毛利小五郎、蘭、そして江戸川コナン。
「女の勘よ!なーんかキッド様、来そうな気がするのよね!
まあ、そんな気がしてるのは私だけじゃないみたいだけど…」
園子の視線の先には、もちろん…
「毛利さん!ご無沙汰してます!
蘭さんとコナンくんこんにちは」
「「えっ!?さん!?」」
「何でここに!?」
「実は、あの瞬間移動の時からキッドのファンになっちゃって!
茶木警視にお願いして来ちゃった!」
まあ、本当はキッドについて調べたかったからなのだけれど。
「おい!!警視からの命令だから連れてきてやったが、大人しくしとけよ!!」
「はーい」
この人、自由すぎだろ…
コナンくんにそう思われていたなんて、私は知る由もない。
「それにしても、なんで金庫部屋の周りを警備してんだ?
どーせなら部屋ん中の金庫の前で張り込んでりゃいいものを…」
毛利さんが不思議そうに言った。
実は私も同じことを思ってたんだよな。
「無用だからじゃよ、毛利探偵。
何なら見てみなさるか?儂の自慢の鉄狸を…」
そう言って鈴木次郎吉相談役が金庫部屋の扉を開けた。
そはには、私の身長程もある大きくて頑丈そうな扉が壁に埋め込まれており、それ以外は何も無い無機質な部屋が広がっていた。