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【名探偵コナン】sangría

第16章 餌付け




「今日は本当にありがとうございました。
全部とっても美味しかったです」


片付けを終え、スーパーで買った荷物も忘れずに持って玄関へ向かった。


「いえ、お口に合ったようでよかった。
これからは是非、食生活にも気を付けてください」

「あはは、善処します…」


約束は出来ないな。


「もしまた食べたくなったらいらしてください。
いつでもご馳走しますよ」

「いや、それはちょっと…」


年下の男性に2度も食べ物を恵んでもらうなんて、私の面子が立たなすぎる。
しかもここはよそ様のよそ様の家、そんな簡単に上がれるわけがない。


「あ!だったら今度は私がご馳走させて下さい!
手料理はちょっと難しいですけど、美味しいお店なら沢山知ってますので」


このままご馳走になりっぱなしも何だなと思って、そう提案した。
家に招いて料理を振る舞うことは出来ないが、レストランで奢るくらいなら出来る。

先程連絡先も聞いたから、いつでもお誘い可能だしね。



「…その言葉、忘れないでくださいね」



そう言って沖矢さんはふっと微笑んだ。


すると沖矢さんはゆっくりと私に近づいて目の前まで来ると、私の後頭部に手を回して髪留めを取った。
纏められていた髪が一気に解ける。

そして、右手を私の左頬へ添えて静かに見つめた。



「…あ、あの……」



沖矢さんの閉じた目は開くことなく、でもその瞳は私をじっと捉えているように感じた。

突然の出来事に、頭がついていかない。





「…君は、弱っちくなんてないさ。
俺が保証する」




そのまま頬に添えられた手は頭へ移動して、ポンポンと優しく私の頭を撫でた。

優しい表情と暖かく大きな手。




……私、この人のこと知ってる



直感的にそう思った。

しかし、そう思った時には彼の手は離れていて、先程までの距離に戻っていた。




「ではまた。
食事のお誘い、お待ちしてます」



玄関に佇む沖矢さんに別れを告げ、私は工藤邸の扉を閉じた。

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